"脱造船"で復活、三井E&S「クレーン事業」の凄み 港湾クレーンで世界シェア2位、脱炭素で受注増
その三井E&Sで、舶用エンジンとともに事業柱になっているのが、中国の上海振華重工(ZPMC)に次いでヨーロッパ勢と世界シェア2位の争いを繰り広げる港湾クレーン事業だ。
これまで世界で納入したガントリークレーンは累計470基以上、ヤード内を移動するトランスファークレーン(RTG)は1690基以上に上る。
国内ではガントリークレーンでJFEエンジニアリングや住友重機械搬送システム、RTGは三菱ロジネクストなどが競合になるが、2022年度の実績では発注された32基(ガントリークレーンとRTGの合計)のうち26基を三井E&Sが受注している。
通常2本のアームを1本にした
「われわれはとくにコンテナ(ガントリー)クレーンが得意だ。通常2本のアームを1本にしたのが特徴で、軽量で風を受ける面積も減る。クレーンが大型化する中で有利だった」
そう話すのは、三井E&S成長事業推進事業部の市村欣也マーケティンググループ長だ。コンテナを吊り上げるクレーンの腕は通常2本だ。三井E&Sは20年以上前にこれを1本にすることに成功し、2001年にはマレーシアに納入している。
地上50メートルの操縦席で、強風も吹く中、約60メートルにおよぶアームを操作して10センチ程度の誤差でコンテナを積み卸しするのがクレーン操作の世界だ。軽い上に、風の影響が相対的に少ない構造は、発注者の埠頭運営会社から圧倒的な支持を得ることになる。
「単純にアームを1本にするのは他社でも可能だが、とくにヒンジ部(部材の継ぎ目)の設計がものすごく難しい。強度を上げようと思えば溶接を増やせばいいが、それをやると溶接部から割れてくる。溶接部分を少なくしながら所定の強度をいかに出すかがカギになる。内部構造、部材の材質、施工法に至るまで試行錯誤を繰り返して実現した」(市村氏)
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