"脱造船"で復活、三井E&S「クレーン事業」の凄み 港湾クレーンで世界シェア2位、脱炭素で受注増

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巨大なガントリークレーンが並ぶ大井コンテナ埠頭(記者撮影)
 2023年から船舶の燃費規制が強化されるなど、海事産業に脱炭素の波が押し寄せている。こうした流れを追い風に、船舶用エンジン首位の三井E&Sの業績回復が著しい。2022年には祖業の造船業を切り離し、主に舶用エンジンと世界シェア2位の港湾クレーンに事業を集中。2023年3月期に5期連続の営業赤字から復活を果たした、三井E&Sの強みを探った。

「時代にあわせて会社は変わらなければ」

東京・品川区の大井コンテナ埠頭。年間コンテナ取扱個数は493万TEU(20フィートコンテナ換算個数=2021年)を誇る日本最大の貿易港だ。長さ60メートルのアームを持ち、高さ50メートルに及ぶ巨大なガントリークレーン(貨物コンテナの積み卸しを行う大型クレーン)が20基も稼働している。

大井埠頭の20基のクレーンのうち、12基を製造したのが三井E&Sだ。旧三井造船といったほうがわかりやすいかもしれない。

同社はインドネシアの石炭火力発電所建設工事に伴う巨額損失の計上で2019年以降事業再編を余儀なくされ、2021年10月に艦艇部門のすべてを三菱重工グループに、2022年10月までに商船部門の66%を常石造船に事業譲渡した。実質、祖業の造船業からの撤退だった。

「造船の切り離しは社員全員断腸の思いだった。しかし、無理して意地を張っても限界がある。やっぱり時代にあわせて会社は変わらなければならない」。三井E&Sの高橋岳之社長は前を向く。

2020年3月期には620億円もの営業赤字を計上したが、事業再編後の2023年3月期に93億円の黒字に転じる。売上高こそ同期間に3分の1に縮小したものの、2022年3月末に約296億円まで落ち込んだ時価総額は約790億円まで回復している(2024年1月22日現在)。1株3円の復配も果たした。

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