
高橋岳之(たかはし・たけゆき)/三井E&S社長。1964年生まれ。87年学習院大学法学部卒業、三井造船(現三井E&S)入社。鉄構・物流事業本部運搬機システム営業部長などを経て2019年当社取締役、21年取締役CCO、22年4月から現職。(撮影:今井康一)
2018年度以降、インドネシア火力発電所工事で巨額損失を計上し、祖業の造船業からの撤退も余儀なくされた三井E&S。現在は舶用エンジンと港湾クレーンに事業集約して20年3月期に620億円を計上していた営業赤字は23年3月期に93億円の黒字に転じた。復調の背景と成長戦略について高橋岳之社長に直撃した。
──22年、事業再編の一環で祖業の造船業から撤退しました。
僕を含め全社員が断腸の思いだったと思う。今のグローバルな造船業の中で日本のポジションは極めて厳しい状況にある。日本の中でもまだまだ造船会社は多い。弊社が単独で生き残るには非常に厳しい状況にあった。フィンランド通信設備大手のノキアも製紙会社、携帯電話と業態を変えていった。100年以上事業をやっていると環境も変化する。
業績悪化の直接の原因はインドネシアの発電所工事だが、それをきっかけに不採算事業を見直し、全体を整理することができた。われわれは非常に優秀な技術職の集団を擁し品質のよいものを造ってきた。しかし、考え方がプロダクトアウトだった。多大な研究開発投資を重ねて結局売れなかったものもある。そこを変えて、マーケットインの発想に転換していこうと社員には訴えている。22年度で事業再生計画は完遂し、今期から反転攻勢に出ている。
──造船への思い入れは社員にもあったと思います。どのようにモチベーションを保ってきたのですか。
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