というのも、前回紹介した兼業デザイナーの飯塚さんが副業をやってみて感じた困難は以下のものがあった。
・予期していなかった、膨大な量の修正が発生
・連絡がメールではなく電話
・価格交渉ができず、低い賃金のままになってしまっている
これらは、一般企業であれば「やりがい搾取」と呼ばれるような状態ではないだろうか。たとえば上司がいつでも電話で連絡してくるだとか時間外労働として修正を要求してくると言われたら、誰だって「けっこうブラック企業だね!?」と言う人は多いのではないか。さらに賃金が不当に低いというのも、本田が「やりがい搾取」の企業の代表例として挙げた状態だ。
会社だったら「やりがい搾取」だと言われる状態が、副業では「やりがい搾取」と言われづらい。
副業は「やりがい搾取」に気づきづらい
なぜなら副業は、個人間の契約であることが多く、客観的な労働環境のチェックをする人がほぼいないからだ。個人間の契約であれば、「その仕事はあなたがやりたくてやっているんでしょう」と言われても仕方がない。しかし同じことを会社員でブラック企業に苦しむ人に言えるだろうか?
会社員であれ個人事業主であれ、不当な労働量を求める労働環境は、改善されるべきなのに。
正直、私自身も自分が副業していた時のことを考えると、自分で自分にブラック労働を課していたのではないか? という気持ちになってくる。一社一社の出版社との契約は決して不当ではなかったけれど(きちんと原稿料はもらっていたので)、だが労働量が適切だったのか、という問いに関してはまったくもって……自信がない。だけどそんなことを考えている余裕はなかった。
そう、ぶっちゃけ副業をやっていると「やりがい搾取」に気づきづらくなる。そう私は思う。なぜなら副業は忙しいからだ。自分で自分の労働環境なんてチェックしてられないし、他人からの目が入ることもない。基本的に副業は本業より「やりがい搾取」を生みやすい構造にある。そう私は思っている。
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