僕は現在、自分の店やメディアを通して、「見られる立場(存在)」になっている。
だから、調理師を目指して修業中の若者が来たら、
「カウンターからきれいな仕事を見せたい」
「包丁さばきの上手なところを見せたい」
「包丁を使うたびにささっと拭いて、また切って……、美しい流れ作業を見せたい」
というように、料理人・笠原将弘に魅力を感じてもらえることを意識して仕事をしている。
ほかにも、ちょっと面白いことを言って笑わせたりとか。料理人というのは職人だから、怖くてとっつきにくいというイメージがつきまといがちだが、あえてそのイメージを崩すように、ユーモアやジョークの1つや2つ、言うようにしている。
「料理人って、料理ができるだけじゃなくて、こんなに面白いことも言うんだ」
と、見ている人、特に若い人たちに感じてもらうことは、僕にとって嬉しいことだ。
それで、若い人たちが、和食をもっと身近なものとして受け入れてくれたり、和食料理人を目指してくれたりしたら尚のこといい。
和食に魅力を感じてもらえるなら、そして、少しでも関心を持ってもらえるなら、お笑い芸人と絡んで面白いことも言いますよ。それもかっこよさの一つだと思うから。
かっこよく、きれいな仕事をしたい
僕が子どもの頃に見ていた料理番組に出てくる和食料理人は、どうもみんな話が固かった。
料理の腕はもちろんすごいのだけれど、不器用で、話し方もぼそぼそしているために、何が言いたいのかわかりづらかったり……。
「もっと面白いことを言えばいいのにな」なんて、子ども心にも思っていた。
しかも、丸坊主や角刈り頭で、「ちょっと怖い」みたいな雰囲気も漂っていて、近寄りがたいイメージがあった。
でも、今の料理人は、料理だけできればいいわけじゃない。料理人のイメージを僕は変えたいと思っている。
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