知ったかぶりでは会話が空回りするだけ
「肩で風を切る」「海老で鯛を釣る」「鬼の居ぬ間に洗濯」「絵に描いた餅」……。
世の中のことわりや人生の機微を簡潔にすくい取っている諺(ことわざ)の数々も、画面上の超短文や絵文字だけで事足りるスマホ社会では、登場することがめっきり減っています。
そうした諺の類は、ゆったりと交わされる会話でこそ挟まれるものだとしたら、今や人と向かい合って話すのは時間の無駄とすら考える若者たちに、諺の知識が身に付くはずもありません。
諺以外にも、日本語には、じつに巧みな喩えで本来の意味を込めた言い回しが他にもたくさんあり、昔はごく自然に誰もが「ああ、それそれ」と比喩を共通に理解していました。
けれども、それはもう、離れた世代間では通用しない――と思えます。
若者たちが「生きた日本語」からどんどん遠ざかれば遠ざかるほど、諺の使用は減るばかりで、理解する日本人の数も比例して減っていくことは必然と言えましょう。
日本人が取り交わす会話はやがて、それこそ砂を噛むような味気ないものになる……と言ったら、少し脅かし過ぎでしょうか。
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