スマホ社会の現代日本。
若者たちは黙々と動画やゲームの画面と向かい合い、用事は絵文字を含む超短文メールを素早く打つばかり。
時間を割いて他人と会って話すのは「タイパが悪い」とすら言う彼らと、「生きた」日本語の距離がいま、信じられないくらい離れたものになっています。
言い換えるならそれは、年配者との間の大きなコミュニケーションの溝。
「日本人なのに何故か日本語が通じない」という笑えない状況は、もはや見過ごせませんが、「その日本人同士と思うところが盲点」と、話すのは、言語学者の山口謠司氏。
『じつは伝わっていない日本語大図鑑』と題された一冊には、日本人ならハッとする指摘が満載。
その中から、会話が通じない「落とし穴」になりがちな日本語の興味深い例を紹介してみましょう。
「伝わらない日本語」に無頓着な昭和世代
ある若手社員が、上司に呼び出されて叱責を受けたときの会話です。
●上司「まったくもう、おととい来やがれ!」
●社員「せめて、昨日来ればよかったんでしょうか?」
●社員「せめて、昨日来ればよかったんでしょうか?」
「おととい来やがれ!」は、激しい怒りを表す慣用表現ですが、そんな言葉なんかまるで知らなかったと、後日、件(くだん)の若者が首を振っていました。
また、先日の第212回臨時国会において、岸田首相はその所信表明演説のなかで、「一丁目一番地は、経済です!」と力説したことを覚えている方も多いと思います。
「一丁目一番地」とは、「いちばん重要な最優先事項」を意味する言葉。
会社員の若者たちから「ウチの上司が言ってる、言ってる」という声も聞かれるほど、昭和世代がよく口にしている頻発語です。
しかしながら、ある調査が伝えるところによれば、若い彼らは最初、何のことだかわからず別の意味に捉えていた人が大半でした。
いわく「新宿の歓楽街のこと?」「どこかの居酒屋の住所?」「誰かの住まいだと思った」……などなど。
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