「こども誰でも通園制度」理想実現までの高い壁 利用枠「月10時間以上」だが現場は保育士不足

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制度を検討した検討会の報告では、一番の狙いとして、子どもにとっての次のようなメリットが挙げられていた(要約)。

・子どもの育ちに適した人的・物的・空間的環境があり、専門職がいる場で、家庭とは異なる経験や、家族以外の人と関わる機会が得られる。

・子どもにとって年齢の近い子どもとの関わりは、社会情緒的な発達への効果的な影響がある。

・保護者が専門職から子どものよいところや成長を伝えられたり、子どもをともに見守る人がいると感じたりすることで、子どもへの接し方が変わったり新たな気づきを得たりして、子どもとの関係性や子どもの育ちにもよい影響がある。

この制度が、単なる保護者の負担軽減ではなく、「すべての子どもの育ちを応援し、良質な成育環境を整備する」ことを狙いとして掲げているのは、一時預かり事業との大きな違いであり、「子どもを真ん中に」という理念にかなうものだと思う。

しかし、こういった効果が得られるためには、同じ施設で継続的に保育が行われ、保育者、子ども、保護者の間に信頼関係が構築される必要がある。

もちろん、一時預かり事業をつないで延長できるようにすることもできる。しかし、そうやって時間を延ばせばよいというものでもない。この事業を大きくするのなら、それに見合った実施体制を整えなくてはならない。

待機児童数は減少しているものの、保育の必要性を認められる子どもの保育の枠が不足している地域はまだまだ多いのも事実だ。

質が低い保育では意味がない

受け入れ側の保育現場からは、先が読めない役割拡大の要請に不安の声が上がっている。

保育の場に慣れない子どもが入れ替わり立ち替わりする場合、保育者は子どもの心や安全への配慮をより細やかにしなくてはならない。常時保育児の保育よりも手厚い体制が必要であり、現行の一時預かり事業の補助金では、十分な人員が配置できないという声も上がっている。

また、一時預かり事業の専用室をもっている園では、その設備や人員を活かすことができるが、従来の保育体制のもとで定員の空きを活用する場合には、やり方によっては保育者や在園児、利用児童にとって負担が大きくなってしまう。

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