イチゴを1粒1000円で売る方法を思いつけるか? 用途を変えれば、高くてもバカ売れに!

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「線香花火」にあなたはどんなイメージを持っていますか?

迫力ある打ち上げ花火を観るのもいいですが、家族や仲間と手持ち花火で遊んだ思い出がある方も多いのではないでしょうか? 中でも線香花火は、派手さはないけど儚い美しさがあって、手持ち花火の締めにふさわしい一品です。

とはいえ価格は数ある手持ち花火の中でも、とても安いイメージが一般的です。コンビニなどで花火セットを買ったら入っていたという感じで、わざわざ線香花火を買う人は少ないでしょう。ましてやプレゼントとして誰かに贈るという発想はなかなか出てきませんよね?

しかしそんな線香花火を1箱1万円という価格で贈答品にしてヒットさせた会社があります。それが、福岡県みやま市高田町にある筒井時正玩具花火製造所です。

チープなイメージの線香花火を贈答品にする

代表の筒井良太さんは3代目。高校卒業後、しばらく別の仕事をした後に家業を継ぎました。親戚が営んでいた親工場から線香花火の作り方を受け継ぎますが、初めの10年間はまったく売れませんでした。江戸時代に開発された伝統ある線香花火。

しかし安価な輸入品に押されて国産品はわずか数%というのが現状なのです。そこで筒井さんは、自社の線香花火を海外の量産品と差別化するために、質も見た目も「これぞ国産品」と言われるクオリティを追求することにしました。

花火の質としては、火の玉が大きく、パチパチと散る火花の様子が美しく、途中で火の玉が落ちずに“長くもつ”ことが重要です。宮崎産の松煙や福岡県八女市の手すき和紙を使い、火薬の量や首のより方などにも細心の注意を払いました。

1箱1万円の高級花火として話題になった「花々(はなはな)」は、40本の線香花火が桐箱に収められていて贈答品としてぴったりです。線香花火は持ち手部分を花びらのように仕上げて、それを束ねることで「花束」を表現しました。

さらに桐箱には、和蝋燭と山桜でつくったロウソク立てまで入っています。その佇まいがまた、なんとも優雅です。

この花火が「バカ売れ」した理由のひとつとして、「水溜りボンド」などの人気YouTuberらによる「検証動画」にうってつけの製品だったことが挙げられます。YouTuberが高額商品を購入したり、使用したりする様子を見せる「検証動画」は、YouTubeで再生回数が伸びやすい人気のテーマです。一般的な価格よりも高いほど話題性が高く、SNSでも拡散されやすくなります。

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2022年10月に公開された「水溜りボンド」の「【1万円】世界一高い線香花火の火が長持ちすぎたww」(水溜りボンド)というショート動画の再生回数は、約1年で289万回に達しています(2024年1月時点)。コメント欄には「質がよくて上品でお洒落でエモい」「上質な線香花火の儚さ、すごく好き!」といった言葉が並び、「花々」の情緒的な魅力が視聴者の感情を動かしていることがわかります。

筒井時正玩具花火製造所は、日本の風物詩である花火を「人に贈る」という新たな文化を提唱することで、「1箱1万円」という売値を成立させました。

また、儚さ、美しさ、懐かしさなど、エモーショナルな感情を呼び起こす商品パッケージや商品コンセプトによって、線香花火の魅力を伝え切っています。

このように、一般的にはプレゼントには向かないと思われている商品であっても、工夫次第では贈答品として高価格で売ることが可能になるのです。ぜひ自社の商品でチャレンジできないか考えてみてください。

川上 徹也 コピーライター、湘南ストーリーブランディング研究所代表

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かわかみ てつや / Tetsuya Kawakami

大阪大学人間科学部卒業後、大手広告代理店勤務を経て独立。50社以上の企業の広告制作や各種プロジェクトに携わる。東京コピーライターズクラブ新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴は15回以上。中でも、企業の「哲学」や「理念」を1行に凝縮して旗印として掲げる「川上コピー」が得意分野。「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリーブランディング」という独自の手法を開発した第一人者として知られ、現在は広告にとどまらず、「企業」「団体」「地域」などが本来持っている価値を見える化し輝く方法を、個別のアドバイスや講演・執筆を通じて提供している。著書は累計13万部突破の角川新書バカシリース(『物を売るバカ』『1行バカ売れ』『こだわりバカ』)をはじめ計24冊。海外(台湾・韓国・中国)での出版も翻訳中も含め15冊を数える。

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