バレンタインで「チョコ」食べる人が知らない真実 食べ物ではなく飲み物、しかも薬だった
断食は、どの宗教にも見られる修行です。キリスト教では、イエスの復活を祝う春のイースター(復活祭)の前の時期に、1日の食事を1回に減らしたり、肉を食べない日を設けたりすることで、イエスの苦難を追体験することを現在でも教えとしています。
当時の聖職者たちの間では、この断食の時期にチョコレートを摂取していいのかどうかが大問題になりました。昔も今も、断食の期間に全く食べ物を口にしないわけではなかったのですが、食事と食事の間には、飲み物しか口にすることができませんでした。
断食中は栄養不足になりますから、滋養に富むチョコレートが飲めれば、聖職者たちにとっては好ましいですよね。また、滋養強壮に役立つものという認識でしたから、薬としての性格ももっていました。薬であれば、断食中に飲んでも問題ないというわけです。
100年も続いたチョコレート論争
チョコレートは飲み物なのか、食べ物なのか、はたまた薬なのか、という論争が巻き起こりました。実際、このころのチョコレートは、まだドロドロとした状態のものだったので、何とも判断ができなかったのです。
もともとのルーツであるメソアメリカでは飲み物として飲んでいたのだから問題はないとか、砂糖やハチミツなどは水に溶けているから問題ないけれど、カカオはすりつぶして混ぜてあるだけなので食べ物としての性質が変わっていないから食べ物だとか、少しだけ飲むなら問題ないとか、あらゆる角度から議論されました。
そして16世紀半ば、当時のローマ教皇ピウス5世が、実際にチョコレートを摂取して判断を下しました。
「これは飲み物だから、断食中に摂取してもかまわない」
しかし、これに対して、カカオは脂肪分が多く、体温を上昇させる作用もあるので「食べ物だ」と主張して、チョコレートを摂取するのはキリスト教の戒律に違反すると主張した医師があとを絶たなかったといいます。
また、時が経つにつれて、カカオの調理方法も進化し、水のほかに卵やミルクを加えたり、粉末にしたトウモロコシを加えたりといったことも行われていたので、どの調理方法なら「飲み物」また「薬」と言えるのか、という論争がますます複雑になっていきました。
16世紀から17世紀にかけて、100年もの間論争が続いたこの問題は、「カカオに水を混ぜた程度のものなら、よしとする」という説に落ち着いていきました。
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