バレンタインで「チョコ」食べる人が知らない真実 食べ物ではなく飲み物、しかも薬だった
一方、スペイン人が母国に持ち帰ったカカオも、スペイン国内に広がっていきます。国王に献上されたカカオは、焙煎してすりつぶしたあと、水や砂糖を加えて温め、甘味をつけて美味しく飲めるようにしました。
砂糖もカカオと同様に、当時は薬として扱われていました。輸入品のカカオも砂糖も貴重なものだったので、王室をはじめ、カトリックの聖職者や貴族など、特権階級の人たちだけが口にできるものでした。
チョコレートは、地位と富の象徴だったのです。甘くて美味しい飲み物としてのチョコレート。今のココアのルーツですね。本書では、メソアメリカで飲まれていたものをカカオドリンクと呼んできましたが、ここからはチョコレートと呼んでいきたいと思います。
美味しく加工されたチョコレートは、16世紀から17世紀にかけて、ヨーロッパ各地に広まっていきました。
修道院でチョコレートが作られた
カカオの調理をする舞台のひとつとなったのが修道院でした。スペインのカタルーニャ地方に今も残るポブレー修道院は、12世紀半ば、イスラム教徒に占領されていたバルセロナ地域を、レコンキスタ(国土回復運動)によってイスラム教徒から奪回した勝利の記念として建設が始まった修道院です。
何世紀もかけて建てられた荘厳で大規模な建物の2階には「チョコレートの間」があって、ここでカカオが調理されたといいます。ポブレー修道院は、1991年に世界文化遺産に登録されています。この修道院では、カカオと一緒にヨーロッパにもたらされた香辛料などを加えて苦味を消し、砂糖と水を足して温めることによって、香りのよい美味しいものに進化させていったのです。
王侯貴族や聖職者たちがとりこになったチョコレートでしたが、この貴重な飲み物は、滋養強壮に役立つ薬としての意味合いが強いものでした。美味しいうえに、飲むと元気が出るので、毎日飲みたいと思う一方で、キリスト教徒にとって、難しい問題に直面することになりました。
それは、断食です。
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