ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル

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そのため、確かにこれら3カ国はアメリカに対してうるさく反発・攻撃しますが、一方でアメリカと妥協できることを夢見ています。問題は、アメリカがこれら3カ国が望む条件で妥協する考えがいっさいない、ということです。

アンドレイ・ランコフ/1963年、旧ソ連・レニングラード(現サンクトペテルブルク)生まれ。レニングラード国立大学を卒業後、同大学の博士課程を修了。金日成総合大学に留学した経験もある。母校やオーストラリア国立大学などで教鞭をとった後、現職。著書に、『平壌の我慢強い庶民たち』『スターリンから金日成へ』『民衆の北朝鮮』『北朝鮮の核心』など邦訳も多数(写真・ランコフ氏提供)

お互いに不信感を拭いきれない関係でもあります。中国からみると、ロシアは19世紀に沿海州など、本来は中国の領土だった部分を「盗んだ」列強の1つです。北朝鮮はやたら自尊心は強いが非合理主義、そして冒険主義が強い国家です。

ロシアはアジアの国家に対して無視、軽視する傾向が根強い。ロシアのエリート層が客観的な視野を持っているとしても、中国に対し心からパートナーとなりえるとは考えづらいでしょう。

北朝鮮からすれば、この国はもともと他国に対する不信感が強い。隣国の中国であっても、「内政干渉をしばしば行う危険な大国」だと思っています。

ロ中朝の3カ国関係の結びつきは強くない

――3カ国の関係を今後もつなぎ止めるものはありますか。

もしロシアで政権交代といったことが生じれば、ロシアはこの3カ国関係から抜け出すでしょう。現時点に限ってみれば、この3カ国関係に加わったことで、砲弾や弾薬を受け取ることができます。

一方で、中国は前述したような戦略的な利益のために、北朝鮮への支援を今後も継続していくと思います。

北朝鮮も国連による経済制裁が重くのしかかっている限り、中国に依存する戦略を放棄しないでしょう。内心、北朝鮮はこんな戦略を好ましいとは思っていませんが、代案を探せずにいます。

金総書記は、自身が政権を継承した2012年から2018年ごろまで続けた市場経済的な改革を放棄しました。そして、住民監視を強化するために有利な中央計画経済を一定程度、復活させました。米中対立が続く中、このような北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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