一般的には、これらから1種類を少量からスタートし、1カ月程度様子を見て、副作用が出る、あるいは効果が出なければ別の種類に変更するが、1種類だけで目標値まで血圧を下げられる割合は約4割未満(『高血圧治療ガイドライン2019』より)。
したがって高血圧の治療は薬の種類が増えやすい。
特に高齢者の場合はほかの病気で薬を服用していることも多く、薬の種類が増えるほど飲み間違えなど、管理が難しくなる。
そこで「ARB+利尿薬」「ARB+カルシウム拮抗薬」の2種類の配合剤、「ARB+カルシウム拮抗薬+利尿薬」の3種類の配合剤も登場している。
「配合剤は、薬の種類を減らせるメリットがあります。ただし、血圧を下げすぎるリスクがあるほか、副作用が出た場合にどちらの薬によるものかわからない場合も出てきます。2種類、3種類と併用して安全性などを確認したうえで、配合剤に切り替えるのが一般的です」(鳥羽医師)
先に挙げた4つの薬以外では、2021年からは心不全治療薬の「アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)」が、使えるようになった。
「高血圧だけが問題となっている人に最初から使用することはありませんが、慢性心不全や心肥大がある人には、向いている薬といえます」と鳥羽医師。
なお、薬を飲んでも血圧が下がらない場合、「2次性高血圧」といって、腎臓の病気やホルモン分泌の乱れなど、別のところに理由があって血圧が上がっていることがある。
鳥羽医師によると、若い世代の高血圧ほどこの割合が高いので、薬が効かない場合は、検査で病気が隠れていないかどうかを探っていくという。
血圧が下がれば薬はやめられるのか
降圧薬は、一生飲み続けなければならないという印象を持つ人も少なくない。確かに降圧薬によって血圧が下がったとしても、それは薬の作用であり、やめると再び血圧は上がる。鳥羽医師はこう話す。
「禁煙や減塩、減量など生活習慣の改善によって、血圧が下がれば、薬をやめられる人はいます。ただし、一度硬くなった血管はもとには戻りません。高血圧は動脈硬化を進め、動脈硬化が進むと、さらに高血圧になるという悪循環に陥ります」
動脈硬化がそこまで進んでいない、30代、40代のうちに、生活習慣の改善や降圧薬によって対策をとることが大事だという。
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