世界展開で「日本語」のパーパスを掲げる意義 SDGsに迎合したような英語のフレーズは使わず
ソニーは、B2Bの製品から、B2Cの家電やゲーム機などのデジタル製品、エンターテインメントまで、さまざまな事業を持つ企業です。そんな、一見バラバラな事業体を持つソニーを「感動を届ける会社」として定義し直したことで、一致団結させることに成功したのです。ソニーはその後、異次元の成長を果たします。
この「KANDO」を体現したプロジェクトに、2018年1月に再び発売された、自律型エンタテインメントロボット「aibo」があります。
1990年代末に発売され、いったん販売終了していたAIBOを復活させたのは、ソニーが培ってきた技術力を用いてユーザーに感動を与えることができると判断したからでしょう。そして実際、aiboは大きな話題となりました。
あえて日本語を使った意義
平井氏は著書『ソニー再生―変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」』(日本経済新聞出版、2021年)の中で、「戦術や戦略といった施策ももちろん重要ですが、それだけでは組織をよみがえらせることはできないのです」と述べています。だからこそ組織をよみがえらせるためには、自信をなくし、実力を発揮できなくなった社員の心の中に眠っている情熱をしっかり解き放って、チームとしての力を最大限、引き出すことが重要だと言っています。
それを愚直にやり通してきたことで、ソニーは再生しました。
後を継いだ吉田憲一郎氏(現ソニーグループ会長CEO)もまた、社長就任から8カ月後に、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動(KANDO)で満たす」を、自社のパーパスとして掲げました。
ソニー復活の理由は一つではないと思いますが、「KANDO」というパーパスを掲げたことで、組織の力を最大限に引き出したことがその大きな一因となったことは、紛れもない事実でしょう。
既存のよくある言葉ではなく、「感動」という日本語をあえてそのまま「KANDO」という言葉として発信したことも、パーパスの訴求力を高めたと言えるでしょう。グローバル企業であるソニーが「ボーダフル」な時代に一体となるために、まさにこれしかないというパーパスだったのです。
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