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おもちゃ箱をひっくり返したような予算案の内実 インフレ下「名目増・実質減」に財務省は成功

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  • 土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授
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はたして、社会保障費の査定の結果はどうなったか。

自然増の5200億円から、薬価改定などによる制度改革・効率化を進めて1400億円抑制を図り、3700億円程度の増加にとどめることができた。

ただ、これでは医療・介護従事者の賃上げ(処遇改善)の財源は捻出できない。それに、次元の異なる少子化対策として、2024年度予算政府案と同日に閣議決定された「こども未来戦略」で打ち上げた児童手当の抜本的拡充の財源も十分に工面できない。

そこで、これらの財源のために、インボイス制度導入に伴う消費税収増に相当する1200億円を活用することとした。消費税増税に伴う増収分は、社会保障に充当することとしている。これは、標準税率を10%としたままでも入る消費税の増収分である。

こうして、年金給付のスライド分を含めて、社会保障費を対前年度比で約8500億円増やしたというわけである。

歳出の4分の1を占める「借金のツケ」

社会保障関係費の中で最も多い支出は年金である。公的年金給付では、物価や賃金の上昇を反映して物価スライドや賃金スライドを導入している。目下、物価や賃金が3%超上がっていることから、それに伴い公的年金給付は増えることとなる。

ただ、東洋経済オンラインの本連載の拙稿「年金『世代間の公平』をめぐる与野党の攻防」で詳述したように、年金の給付と負担の世代間格差を縮めるために、マクロ経済スライドが導入されている。物価も賃金も上昇している下では、現行のマクロ経済スライドは発動されることとなっている。

2024年度については、給付を0.4%下げる形でマクロ経済スライドが発動されることとなった。そして、公的年金給付は2.9%引き上げられる模様である。

もう1つ注目すべきは、国債費である。過去に発行した国債の元本償還と利払費が含まれている。2024年度予算案では、国債費が27兆0090億円と過去最高となった。国債費が歳出総額に占める割合は、約24%と、歳出全体の4分の1を占めるほどになっている。過去に負った借金のツケが、じわじわと国の財政の自由度を奪ってゆく。

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【所得減税の歳入への影響は?】

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