スポーツ/セダン対極の中の「クラウンらしさ」 駆動方式や性格が違ってもクラウンである理由

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ただし、似ている部分もある。フロントマスクだ。4つのボディすべてが、LEDを生かした細いヘッドランプと、その下の大きな開口部という共通項を持つ。ハンフリーズ氏も「ヘッドランプは統一感を持たせた」と語っている。これが新しい“クラウンらしさ”ということなのだろう。

全モデルに共通するコの字型のLEDヘッドライト(写真:トヨタ自動車)
全モデルに共通するコの字型のLEDヘッドライト(写真:トヨタ自動車)

それ以上に統一感があるのはインテリアで、端正なT字型のインパネ、メーターとセンターパネルをつなげた横長のディスプレイ、インパネからセンターコンソールやドアトリムへのつながりなど、共通している部分が多い。

写真はスポーツだが、インテリアはどのタイプも基本的なレイアウトは共通(写真:トヨタ自動車)
写真はスポーツだが、どのタイプもインテリアの基本的なレイアウトは共通(写真:トヨタ自動車)

「変わった」こと「変わらない」こと

前にも書いたように、セダンと他の3つのボディはパワートレインのレイアウトがまるで異なる。それなのに、ここまでイメージを近づけてきたことを見て、まもなく70周年を迎えるクラウンの“ブランド”をここで継承しているのだと思った。

スポーツのキャラクターを考えるとこのインテリアはコンサバティブだと思う人もいそうだが、逆に言えば、これまでクラウンを愛用してきた人にも受け入れやすい造形である。

2022年7月の発表での写真。右の黄色いボディのエステートのみ未発売(写真:トヨタ自動車)
2022年7月の発表での写真。右の黄色いボディのエステートのみ未発売(写真:トヨタ自動車)

メカニズムでは、スポーツにPHEV、セダンにFCEV(燃料電池車)が、それぞれクラウンとして初めて登場した。前者はグローバル展開を考えれば必須であるし、後者はMIRAIとプラットフォームを共有しているので当然だったと思える。

ここまでの展開を見て感じるのは、新型クラウンはモダンなスタイリングや4つのボディバリエーションで「クラウンが変わった」ことを強く印象づけながら、セダンの設定やインテリアの仕立てで「クラウンは変わらない」こともアピールしていることだ。

とりわけセダンの存在は、これまでのクラウンとこれからのクラウンの橋渡しを務める存在であり、このボディがなければ新型クラウンにはネガティブな評価が増えていただろう。それを考えれば、「セダンも考えてみないか」と注文をつけた豊田氏の一言は、限りなく重いものだったと思うのである。

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森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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