事例解説「安心な職場環境」怠った企業の"その後" 法規制違反・訴訟リスクに直面する可能性も

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続いて、労働問題の現状に目を向けると、ILO(国際労働機関)の調査結果によれば、世界中で約2500万人が強制労働を受けており、うち約430万人が子どもとされています。地域では東アジアと東南アジアが最も多く、1655万人を占めます。セクターでは家事が最も多く、次いで建設、製造、農業と続きます(出所:International Labour Organization, Forced Labour: Global Overview)。

強制労働の現状を見ると、1日当たり2760万人が強制労働を課せられており、この数字は全世界で1000人当たり3.5人が強制的に働かされていることを意味します。女性と少女が全体のうち1180万人を占め、子どもは330万人を超えています。

経年変化では、近年、強制労働は増加の一途をたどっています。

社会的な視点から見た人権・労働問題

人権・労働問題は「身体的」と「社会的」に大別されます。ここまでは「身体的」な視点を中心に現状を見てきましたが、「社会的」な視点でも定量的な数値を見てみましょう。

ILOは2023年3月、労働市場における性別間の格差について指摘した報告書「New data shine light on gender gaps in the labour market」を公表しました。この報告書によると、就職の機会や労働条件における男女の格差は、私たちが以前に認識していたものよりも深刻な問題であることが明らかになりました。

また、ILOの新たな指標である「労働需要不足(jobs gap)」は、働く意志がありながら職に就けていないすべての人々を対象にしています。

この指標によると、低所得国では、職を見つけられない女性の割合は24.9%、対照的に男性のその割合は16.6%でした(出所:International Labour Organization, New data shine light on gender gaps in the labour market)。

これは通常使用される失業率よりも、女性の就労状況がかなり厳しいことを示しており、女性が職を得ることが男性に比べて依然として難しい状況であることを示唆しています。

「働きたいが仕事がない」と答えた世界の生産年齢人口のうち、女性は15%、男性は10.5%でした。男女差は、2005年から2022年にかけてほとんど変化していません。

では「人権・労働問題」について、企業はどのようなことが求められているのか、セクター・業種ごとの取り組みと実際の事例を一部紹介していきましょう。

■労働者の安全と健康の確保が企業存続の基盤となる「建築資材」

建設資材メーカーは、人々の暮らしや街のインフラを支えるため、建築物や土木施設の建設工事現場で使われる建材や住宅設備機器を提供しています。特に近年では、環境・防災、デジタル対応などの高付加価値製品を開発・提供することでサステナブルな社会の実現にも貢献しています。

一方で、社会課題の解決に貢献する価値を創出するためには、開発・生産現場における多数のリソース確保と、安全衛生活動の推進による労働者の安全と健康の確保が企業存続の基盤となっています。

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