英エコノミスト誌が今回「日本は買い」だと判断したのは、「2つの外的ショックと2つの内的シフト」が原因である。このロジックがちょっと面白い。
日本は「一世代をかけてようやく変わり始めた」
「2つの外的ショック」とは、普通であればマイナスとなる物価上昇と地政学リスクが、日本経済に対してはプラスに働いていることを指す。確かに物価は日本銀行の目標である2%を超えていて、「物価と賃金の好循環」が見えてきた。そして経済安全保障を理由に、日本に対する大型投資が始まっている。うまくいけば、「日の丸半導体」が復活するかもしれない。
そして「2つの内的シフト」とは、コーポレートガバナンス改革と世代交代が進んだことを指している。「ホンマかいな?」と言いたくなるところだが、「今や海外のアクティビストのみならず、日本の機関投資家も企業にROE(自己資本利益率)向上を求めるようになった」とか、「日経平均採用企業CEOの平均年齢は、過去10年で12歳も下がった」などの指摘がある。
とにかく30年にわたる停滞を経て、文字どおり「一世代」をかけてやっとこの国は変わり始めたぞ、と言ってくれている。「仏の顔も三度まで」というけれども、今度、期待を裏切ったら、さすがに外資は日本を相手にしなくなるだろう。足元では日経平均株価は3万3000円前後まで上昇し、商社株に投資したウォーレン・バフェット氏も大いに儲かっているようだが、日本経済は本当に大丈夫なんだろうか。
10月14日付の当欄に寄稿した「日本経済がちょっといや~な感じになってきた」 で予想したとおり、足元の景気は決して盤石ではないのである。
そもそも臨時国会では13兆円規模の補正予算が成立しており、「物価対策」が焦眉の急となっている。1人4万円の定額減税が適切な手法かどうかは疑問が残るが、とにかく景気を下支えして、2024年の春闘で賃上げが続いてもらわないことには、せっかく海外で芽生えた「日本の変化への期待」がしぼんでしまいかねない。
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