増えるシニア婚活、60代で入会した男女3人の結末 「老後は2人で、でも手を握られるのは嫌」の現実

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「婚活で結婚したいなら、ランチデートのときはお店を予約しておいたほうがいいですよ」

「『どこかいい店を知りませんか?』と私に聞きましたが、女性に行き先を丸投げするのは、婚活では大きなマイナスです」

「あと、私に今『いつ頃から婚活を始めたんですか?』って聞きましたけど、婚活歴を聞くのはマナー違反です」

彼女から交際終了が来たことを告げると、よしおは苦笑いしながら言った。「まあ、彼女に婚活指導をされて私も勉強になったので、よかったです。これからは彼女に教えられたことを生かして婚活していきますよ」。

こうして10人近い女性とお見合いをし、そのなかから選んだのがやすこだった。特別美人でもなく、雰囲気も地味。仕事は、スーパーのバックヤードで総菜を作っていた。

「やすこさんは、ファミレスに連れていっても、ニコニコしながら食事をしていました。お総菜を作る仕事をしているだけに、庶民的な料理を作るのが上手。これまでお見合いで出会ってきた美魔女ではなく、私は彼女といたほうが落ち着きます」

やすこは、5年前に10歳上の夫と死別。今は、亡くなった夫が残してくれた家に住み、遺族年金とパートで生計を立てていた。

「これからのことは2人で決めていきますが、お互いが持っている家を売って、それで2人が住む中古のマンションを買ってもいいかなと思っています。彼女は、『私は働くのが好きだから、体が動くうちは働きたい』と言っています」

シニアの美魔女の落とし穴

シニア世代は、20代の頃にバブルを経験している。男性が女性に食事をごちそうするのは当たり前。特別な日は、特別な場所で食事をするのが当たり前。高価なプレゼントをもらって当たり前。そして、彼女たちが40代の頃に、ある女性誌から美魔女という造語が生まれた。

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華やかな時代を経験してきたシニアの美魔女たちは、どうしても上から目線の婚活をしがちだ。

一方、男性たちは華やかな時代も若い頃に経験はしているが、バブルから転落し、のちにリーマンショックがあり、世界から置いていかれる日本社会を体感しながら働き、定年を迎えた。

そうしたシニア男性を“くたびれている”という言葉で片づけていたら、シニアの結婚はうまくいかない。

行先不安な時代だからこそ、1人よりも2人の暮らしを考える。お互いを思い合い、認め合い、シニア女性に至っては、男性を癒やせる気持ちのある人が成婚を勝ち取れるのではないか。

鎌田 れい 仲人・ライター

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かまた れい / Rei Kamata

雑誌や書籍のライター歴は30年。得意分野は、恋愛、婚活、芸能、ドキュメントなど。タレントの写真集や単行本の企画構成も。『週刊女性』では「人間ドキュメント」や婚活関連の記事を担当。「鎌田絵里」のペンネームで、恋愛少女小説(講談社X文庫)を書いていたことも。婚活パーティーで知り合った夫との結婚生活は19年。双子の女の子の母。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイトはコチラYouTubeも開設。

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