少子化対策「全国一律は無理がある」といえる根拠 「婚姻・出生」都道府県ランキングから見えたこと

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こうしてみると、都道府県別に注力すべきポイントがより明確になると思います。

東京、大阪、愛知、福岡などの大都市は、婚姻力は決して低くはないわけです。ただし、その中で愛知だけは出生力がマイナスのB群に入ります。東京はかろうじてA群内ですが、出生力のプラスはわずかで、ほぼ全国平均並みです。

要するに、大都市のうち、大阪や福岡に比べて、東京と愛知は、婚姻数のわりに出生数が低いことがわかります。ということは、このB群にあたる愛知、北海道、香川と東京は、結婚した夫婦に対する支援の強化が望まれるということになります。

反対に、C群は、出生力はあるのに婚姻力がないことが課題です。結婚した夫婦はそれなりに産む環境や志向があるにもかかわらず、そもそも婚姻が成立しないことで子どもが生まれていないのです。よってC群に求められるのは、子育て支援よりも結婚促進が必要になるわけです。

婚活促進すればいいという単純な話しでもない

問題は、結婚力も出生力もマイナスのD群ですが、東北や北関東地方はすべてここに含まれます。ここに求められるのもC群同様子育て支援ではなく結婚の促進です。子が生まれる前提の婚姻が成立していないのですから。

とはいえ、官製婚活などをすればいいと考えるのは短絡的です。もちろん、そうした出会いがないという理由もありますが、東北や北関東の問題はそれ以前に、地元に魅力的な就職先がなく、東京などへ人口が流出してしまっている影響が大だからです。

つまり、D群において最優先すべきは、若者の雇用や経済環境の改善であり、それがなければそもそも結婚も出生も発生しません(参照:『「不本意未婚」結婚したいのにできない若者の真実』)。

とくに、より深刻だと思うのは、この中に首都圏の埼玉、千葉、神奈川という人口の多い県が固まっていることです。東京の周辺にありながら、東京より明らかに婚姻力が低い。

その要因は、同じ首都圏にありながら、東京の大企業に勤める若者と比べれば、周辺3県の若者の所得が低いという事実は無視できません。なまじ東京圏で生活しているだけに、東京基準で相対評価されがちな部分もあります。こうした人口の多いところでの減少は全国的に影響も大きくなります。

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