杉咲花が主演熱望、映画「市子」に込められた想い 原作の舞台も話題に、戸田彬弘監督に話を聞く
――舞台版を発表したときの戸田さんが「生み落とすのがつらい作品だった」というコメントがありました。そうした作品が舞台で話題を集め、さらに映画化にまで至ったわけですが、この『市子』という作品は、戸田さんにとってどんな作品になったと感じていますか?
初演をやったときから、どこに行っても「川辺市子のために」という作品が僕のすぐそばにある感じがありました。「あの舞台を見ました」「好きでした」といろんな人から言われたりもしましたし。それがあって2018年に続編をやろうということになったわけですから。
それと(サンモールスタジオ選定賞2015で)最優秀脚本賞をいただいているので、そういう意味でも、僕の舞台の代表作といえば「川辺市子のために」と書かれるんだろうなと思いますし、その中で何か一緒にやろうと言ってくれたプロデューサーが選んだ企画も『市子』だった。その映画がすごくいい意味で評価をいただけて、釜山国際映画祭にまで行くことができた。
自分は映画と演劇を行き来している人間なんですけど、どちらの世界でも僕の名刺がもう『市子』になってしまっているというか。この作品があったから進んでこれているんだなという実感はあります。おそらくこれからもずっと代表作になっていくんじゃないかなと思っています。
どうしても「市子」というタイトルにしたかった
――その中であらためて映画化になった思いを今、どう感じていますか?
映画のタイトルを『市子』にしたいというのは僕のわがままでした。当初はホラー映画に捉えられかねないからどうなんだろう、と言われていたんですけど、それに関しては今回、製作委員会も譲歩をしてくれました。
そもそも原作を「川辺市子のために」にしたのは、直前まで書けなかったからなんです。
舞台のときも、稽古をしながら書いていたんですが、毎日深夜に苦しんでいた。市子という子が僕自身もつかめないから、何をしゃべるのか、何を考えているのかわからなくて、書けなくて苦しんでいたときに、彼女のために頑張ろう、という個人的な思いで、タイトルに「ために」を付けたんです。
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