杉咲花が主演熱望、映画「市子」に込められた想い 原作の舞台も話題に、戸田彬弘監督に話を聞く

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――その年表をつくろうと思い立ったのは?

僕らの日常の中に彼女がいるんだ、というリアリティーを持たせたかったからです。そのために日本の情勢というか状況を照らし合わせたという感じですね。

――1990年代の関西を舞台に描こうと思ったのは?

単純に関西が僕の地元だということがあります。1990年代当時の街の雰囲気ならリアルにわかるし、関西弁のセリフを自然に描くことができる。それと方言でやるほうが、その街の地域の人の話なんだなとなるので、よりリアリティーを持ちやすくなる。

標準語だとどうしても普遍的というか、ニュートラルな物語になってしまうので、標準語は外したかったということはあります。

存在しているのに、いない人にされている

――戸田監督の2018年の映画『名前』で、津田寛治さん演じる主人公が名前を偽って生きるというところに、『市子』とのテーマの類似性を感じるのですが。そうしたアイデンティティーの問題に興味があるのでしょうか?

それは偶然ではあるんですが、しかしまったくの偶然とも言えなくて。その理由として、『名前』のプロデューサーが2015年に、「川辺市子のために」の初演を観に来てくださっているんですよ。

『名前』の撮影が2016年なのですが、その初演を見たプロデューサーが道尾秀介さん原案の『名前』の企画を動かしてるときにオファーをしてきてくれた。ですからよくアイデンティティーの問題をずっと追っていくんですかと言われるんですが、全然そういうつもりではないんです。

どちらかというと『市子』もアイデンティティーの問題というよりは、存在しているのに、いないものとされているという。人権無視の方向に興味があってやったというのはありますね。だから『名前』に関しては偶然ですね。ほかの作品ではいっさいそういう題材をやっていないので。

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