杉咲花が主演熱望、映画「市子」に込められた想い 原作の舞台も話題に、戸田彬弘監督に話を聞く
――市子という役柄について、現場で杉咲さんと話し合いはされたんですか?
そういう話は特にしなかったと思います。むしろお互いにしないようにしていたかもしれないですね。
市子とはこういう人間だから、ということを固定しちゃいけない役だったと思うんです。観客がそういう見方ができないようにしなきゃいけなかった。もちろん1つひとつのシーンで、どういう感情、どういう思いでいたのか、という話はしたような気がするんですけど。それくらいですね。
――今回の映画はもともと戸田さんが主宰を務める劇団のチーズtheaterによる舞台「川辺市子のために」が原作になっていますが、映画には舞台版の続編「川辺月子のために」の要素も入っていたと思うのですが。
実は「川辺月子のために」は、映画に出てくる月子とは別の話なんです。映画には障害者支援をやっている方が出てくるんですが、それはもともと「川辺月子のために」に出てきたキャラクターでした。
だからクライマックスに出てくる“とあるエピソード”と、そこの2カ所だけで。ほとんどが「川辺市子のために」を映画にしています。
シルエット状にくりぬかれた舞台版のチラシ
――原作となった舞台版「川辺市子のために」の初演のチラシが非常に印象的でした。ずらっと記されている文字には市子がどのように生きてきたのか、そしてその当時、世間では何が起こっていたのかといったことがこと細かに記されていて。そしてその中心が人のシルエット状にくりぬかれているというものでした。
あのときは「年表で人を埋めたようなデザインでやってください」「その人の歴史や背景が浮かび上がるようなデザインにしてください」と発注して、あれが出てきたという感じです。
そもそも年表を書いて、そこから台本を書き始めたので、チラシを作らなきゃいけないタイミングで台本はなかったんですよ。
だから稽古初日には年表しかなかったですね。出演者だけが決まっているという状態で、セリフも何もなかったし、配役もまだ決まってなかった。稽古をしながら台本を書いていったので、書き終わったのは本番の1週間前でした。
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