教授になれば「こっちのもの?」大学教授のリアル コピペされた論文を見破るのも重要な仕事!?

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<お体が弱いにもかかわらず体育会野球部でご活躍されたり、寝込みながら帰省して成人式にご出席されるなど、ずいぶんと精力的で何よりです。成績を再評価しましたが、100点中18点で、残念ながら60点のC(可)には足りません。お手紙のような勢いで次回も試験を頑張ってください>(135ページより)

彼から再度の異議申し立てはなかったようだ。

教授になれれば「こっちのもの」?

かように日常的なトラブルは頻発するにせよ、それでも著者は大学教授なのである。しかも前述のとおり、なんだかんだ苦労を重ねてきたとはいえ、「S短大の専任講師→T国立大の専任講師→KG大教授」とステップアップを実現している。

複線的なキャリアパスがあるとはいえ、ひとたび教授に昇格してしまえば「こっちのもの」である。私の場合、銀行員時代とくらべて天と地くらいの自由時間の差があるうえ、身分も保証されている。一般企業で耳にするような「問題を起こして降格」というような事例は聞いたことがない。教授になってしまえば、人事を気にせずに本書のような内容の本も書けるのだ(正体がバレれば、怒りそうな数人の顔が思い浮かぶものの、教授の職を追われるようなことはないはずだ。たぶん)。(187ページより)

たしかにそれは事実なのだろうが、ここまで明言されてしまうと「やっぱり大学教授は別格なのね」と感じたりもする(われながら心が狭いな)。

『大学教授こそこそ日記 (日記シリーズ)』(フォレスト出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

交通誘導員、メーター検針員、非正規介護職員、タクシードライバー、コンビニオーナーなど、さまざまな仕事に就く方々が本音を明かしたこの「日記シリーズ」には、それぞれ「大変だなあ」と感じさせる部分があった。それが魅力で、そこに共感していたのだ。

しかし、こういう文章に出くわした結果、「もしや、これまでの『日記シリーズ』のような共感を本書から得ることは難しいのではないか?」という不安を感じもしたわけである(ほんの一瞬だけだけど)。

だが結論からいえば、それは大きな誤解であった。なぜならこのあと、(少なくとも私の目から見れば)大きなどんでん返しが待っていたからだ。

それがなんなのかについては、あえて書かない。が、「なるほど、やっぱり人生にはいろいろあるんだなあ。この先、予想もしないようなことが起きる可能性があるということを念頭において、私も頑張らないと」と思わざるを得なかったのである。

そういう意味で、基本的には楽しめる内容でありながら、結果的としていろいろと考えさせられる一冊でもあったのだった。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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