教授になれば「こっちのもの?」大学教授のリアル コピペされた論文を見破るのも重要な仕事!?

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その意気込みが決して半端なものでないことは、著者名がペンネームであるところからも推測される。30余年にわたって大学業界で見聞きしてきたことを思う存分表現したかったからこそ、実名を明かしてしまったら面倒なことになるというわけだ。

本書を読めば、KG大の関係者の中には「多井学」の正体が誰であるか、推測がつく人がいるかもしれない、学内外から多少の反発があるやもしれないが、洗いざらい書いてしまったからには、もう仕方ない。この際、そういう声には耳をふさぐことにしたい。(「まえがきーー学内の誰にも告げずに…」より)

だからこそ読者としては、誰かの噂話を聞かされるような気楽さで楽しめるわけだが、著者もいうようにその道筋は決して平坦ではなかったらしい。

たとえば、そのことを如実に言い表しているのが「著作」についてのエピソードだ。明治大学の齋藤孝教授がそうであるように、毎月本を出版し、印税やテレビ出演だけでかなりの収入を得ていることが想像できる方もたしかにいらっしゃる。というよりも、それこそが一般的な「本を出している大学教授」像ではないだろうか?

ところがそういった無責任なイメージとは違い、著者のような「売れない教授」だと本を書けば書くほどビンボーになるというのだ。

「売れない教授」は印税ナシ

私はこれまでに10冊の本(単著)を出版している。このうち、4冊は完全な学術書で、著者印税は一銭も出ない。
印税がないだけなら、まだいい。この4冊のうち3冊は「自腹」、あるいは勤務校からの「出版助成金か個人研究費」というかたちで、数十万、時に100万円以上のお金を出版社に供与して、ようやく出版してもらっている。(28〜29ページより)

最初の単著本を出版したことには、10年以上の研究成果を学術書としてまとめて「博士号」を取得するという目的があったらしい。歴史学などの文系では、通常論文よりも単著本の出版が研究業績として高く評価されるそうで、面識のあった出版社に話を持ち込み、150万円の身銭を切ったのだという。結果的には晴れて「博士号」を取得できたようだが、決して安い買い物ではない。

2冊目は海外への在外研究後の成果をまとめたもので、自分の授業でテキスト使用する(200部は買い取る)ことを条件に自腹を切ることなく出版できたという(ただし印税はなし)。

他の2冊も出版助成金(150万円)を得たり、約80万円の個人研究費を出版助成金に回すことで発刊してもらったそうだ。「売れっ子教授とは違って、自分にとって本は『頼まれて書く』ものではなく、『頼んで出してもらう』ものなのだ」という発言の裏には、こうした切実な事情があるわけだ。

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