教授になれば「こっちのもの?」大学教授のリアル コピペされた論文を見破るのも重要な仕事!?

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Cさんというゼミ生のレポートには、「アメリカ人の終末のすごし方」というタイトルがつけられていたという。終末期をどうすごすかを調べることは、アメリカ人の死生観を理解することにつながるに違いない。著者も、「おもしろいところに着目したな」と期待して読み始めたそうだ。

「1970年代はクリスチャンのアメリカ人7割が、終末に教会に行ったとのデータもあるが、現在ではその割合は3割に落ちている」
なるほど。アメリカ人の生活は教会と不可分だが、終末期のすごし方も時代の趨勢とともに変化しつつあるということだろう。
「資料によると、アメリカ人の8割は終末にバーベキューをする。またそれ以外の終末のレジャーとしては、ビールを飲みつつ、ポップコーンを食べて、アメリカンフットボールやメジャーリーグの試合を観戦するということもある」(132ページより)

ここまで読んだ著者が、「いくらアメリカ人とはいえ、死ぬ間際にアクティブすぎる」と感じたのも当然だろう。なんのことはない。レポートの内容は「アメリカ人の週末のすごし方」であり、つまりは「終末」と「週末」の誤植だったわけだ。

「お願い文」との戦い

いうまでもなく、学生がなにより気にするのは成績評価だ。なかでも普段から勉強しない学生にとって、60点以上のC(可)で単位を取れるか否かは死活問題になるわけだ。

そのため大規模クラスの授業では、「お願い文」が答案に書かれることがある。「かくかくしかじかの理由で満足な答案が書けなかったものの、就職も決まって、単位を必要としているので、なにとぞ……」というものである。

あるとき、単位を落とした彼が書面で正式な異議申し立てをしてきたことがあったそうだ。

<私は体育会野球部に所属しております。日々の厳しい練習のため、勉強に割くだけの十分な時間が取れず、勉強をすることができませんでした。また、私はもともと体が弱く、テスト前に体調を崩してしまい寝込んでおり、十分な体調でテストに臨むことができませんでした。あわせて成人式のために帰省をしたこともあり、勉強時間を満足に確保することができませんでした。しかし、今回の試験にあたっては、自分なりに精一杯頑張りました。どうかご配慮をよろしくお願いします>(135ページより)

ところどころに論理矛盾を感じた著者は、彼への回答をこうしたためたという。

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