半導体商社マクニカ「同業買収」の鍵はルネサス 中堅商社グローセルに対し2024年2月メドにTOB
このときは残ったグローセルも商流再編の波には無関係ではいられず、2021年には産業機械顧客向けの製品販売権を失っている。当時の全社売上高に占める割合は17%、金額にして100億円超と影響は甚大で、大規模な人員リストラを余儀なくされた経緯がある。
今後も商流再編が続くことは既定路線。その生き残りレースで脱落する筆頭候補は、ほかの商社に規模で劣るグローセルだったのは間違いないだろう。売上高の7割に達するルネサス依存分を喪失する事態になれば、会社としてはひとたまりもない。
この一連の“商流リストラ”の際、逆に移管先として選ばれてきたのがマクニカだった。
ルネサスは商流を再編する傍らで、海外メーカーの買収を積極化。グローバル化や販売の効率化を進めるルネサスにとって、マクニカの海外販売網やその規模は魅力的に映った。その後も販売権の移管が進み、蜜月関係を築いていった。
そうした事情もあり、業界内では「最終的に残るのはマクニカ1社だけになるのでは」と見ていた関係者も少なくない。
営業人員も手に入る「安い買い物」
一方で、マクニカへさらに販売権を移管する際に障害となっていたのは営業人員の不足だったという。
「この2〜3年の急激な拡大で(営業体制が)追いついていない状況が続いていた。ルネサスに限らず、メーカーからは『(販売権を)渡したいんだけどリソースは本当にあるのか』と言われていた」。マクニカの原一将社長はそう話す。
つまり今回のグローセル買収は、マクニカにとってはルネサス製品だけでなく、製品を扱う営業人員を一度に手中に収める策だったと言える。冒頭の中堅商社幹部は「事前にルネサスとも握っていたのだろう」と舌を巻く。
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