「ミスター外圧」はこうして政治を動かした 慶應大学ジム・フォスター教授に聞く(後編)

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ジム・フォスター教授は現在、慶應義塾大学大学院の政策メディア研究科で教鞭を執る
日本企業が世界で勝てない理由のひとつに、各国政府への働きかけ、つまり「ロビイング」不足があります。日本が今、身に付けるべきロビイングの技術とは何か。前回記事に続き、米国国務省やマイクロソフト日本法人など、米国と日本で官民を渡り歩いてきた慶應大学のジム・フォスター教授にお話を伺います。
※前回記事:日米の政治経済を繋いだ、ある米国人の半生

マイクロソフトが日本政府に提言していた

桑島:前回は、フォスター先生がマイクロソフトの執行役員だった時代に、日米両政府に「日米インターネットエコノミー対話」を推奨することにしたというところまでお聞きしました。

フォスター:はい。それにはまず、政府間のコンタクトポイントを適切にしなければなりません。それまでICT関連のことは、日本の経済産業省と外務省が担当でした。なぜならそれまでICTはデバイスというモノにすぎなかったからです。もちろん、米国側は通商代表部(USTR)です。そして双方の間には何十年もの軋轢がありました。また、その当時はregulatory reform initiativeという規制改革に向けた取り組みが行われていました。

桑島:構造改革の要求みたいなことが行われていたのですね。

フォスター:それがあったので、通商代表部がいつものようにリストを基に各社を回って、どういう問題があるのか調べた。もし通商代表部がメインになったならば、われわれの対話が構造改革協議の対象になるのではないか。それはいやだと思ったし、いろいろ考えて、私はもともと国務省の人間ですから、国務省にリードを取らせるべきだと思った。よく調べたらその当時は、国際通信やIT関連の交渉の担い手は通商代表部ではなくて、国務省だったのです。

日本のほうは、インターネットを担当するところが、総務省になりそうでした。法律上は「インターネット」という言葉が条文に入っていないので、どこに本当に収束するか当時はわからなかったのだけども。

ちょうどそのとき民主党政権が登場して、原口一博さんが総務大臣になりました。彼はすべての家庭にブロードバンドを敷設しようという「光の道」構想を説いた人物です。ですから国際的にも総務省がリーダーシップを取る構えが当時はあったのです。私はそれがわかったので、私たちはそのときインフォメーションオフィサーだった大使館のシューデビュー氏と面会のチャンスを作って、2010年5月の連休の間に2人の対話の機会を設けました。

あのとき、原口さんが新しく出たiPadをワシントンで買って帰ったら、大騒ぎになったでしょう。日本の法律に該当しないものでしたからね。

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