「ミスター外圧」はこうして政治を動かした 慶應大学ジム・フォスター教授に聞く(後編)

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桑島:米国の会社であるマイクロソフトが、日本政府に対してあるべき姿を提言したというのが、非常に面白いですね。たぶんフォスター先生がやろうとしたのは、US-Japanという枠組みの中でインターネットエコノミーにおける規制のプロセスをハーモナイズしようとしたということですよね。

フォスター:ハーモナイズというよりもアライン。一致させようとした。

桑島:なるほど。それがまた非常にお面白い。でも、そのとき先生はマイクロソフトの執行役員だったわけですね。その立場で日本政府に影響を及ぼそうとした。

あだ名は「ミスター外圧」

フォスター:日本政府ばかりではなくて、両政府です。なぜならマイクロソフトもグーグルもみんな多国籍企業です。日本はマイクロソフトにとって2番目に大きいマーケットで、日本だけがプライバシーの面や競争政策、著作権などで、米国と違う政策、違う方向に行ってしまうと、ビジネスがその分、難しくなるのです。また日本にとっても不利になります。今は必ずしもそうではないけれど、当時は米国企業のオペレーションが世界のスタンダードだったので。

桑島:ガラパゴスになってしまいますね。

フォスター:そういう意味で私は、いつも米国が一方的に日本政府に働きかけて、日本の企業がそれに反発するというストーリーを変えようとしたのです。1980~90年代、それをずっと肌で感じていたので。そこを上手に変えられたら、対立点が協力点になる。私が1980年代に自分につけられていた名前、ご存じですか。ずばり「ミスター外圧」です(笑)。

政治家の小沢一郎と組んで、日本を変えようとする人物ですね。私はまったくそのつもりはなかったし、もちろん小沢一郎さんともよく働いたんですけれども、ほかの先生、羽田孜さんとか、加藤紘一さんとか、渡辺美智雄さんとも深い関係があったので。

今も構造改革は必要だと思うのですが、実際に日本の経済構造を変えるものはインターネットだと思います。たとえば、ごく最近まで日本で価格競争はあまりなかった。公正取引委員会がほとんど実質的な構造改革をしようとしなかったからです。でも楽天などがインターネットビジネスをするようになってからは、みんな自分の目で価格を比べるので、だんだん本当の意味での価格競争が日本で起こってきましたね。

私は、日本経済を変えるための最大の薬は、インターネットだと思っています。インターネットエコノミーを構築できれば、おのずから問題の解決につながるのです。広告業界では、まだ電通や博報堂が新聞やテレビの広告シェアを独占しているでしょう。しかし私の学生は、新聞を読まないしテレビも見ない。インターネットを見るのです。それでグーグルなどの新しい会社の広告提供ビジネスがすごくパワフルになった一方、既存の広告代理店はまったくタッチできない。インターネットが経済的な理由で日本の社会を変えるのです。

それには、インターネットの普及を日本でいかに早めるかがカギだと思っていた。そのためにインターネットエコノミー白書を書いたし、マイクロソフトにもそう説明しました。

桑島:なるほど。2つ質問があります。マイクロソフトに入ってから日本政府と取引するとき、何がいちばん大変だったのか。もうひとつはマイクロソフトという立場で日本政府とやり取りするのに、何がいちばん有効だったのか。

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