フォスター:マイクロソフトは多国籍企業ですけれども、私はマイクロソフトの観点からだけではなくて、米国の観点からやったのです。私はマイクロソフトということをあまり表に出さず、むしろ日本でインターネットエコノミーをよくするために何をしなければならないのかという観点で話をしていました。
そのときはマイクロソフト自体がソフトウエア会社だったので、それほどインターネットとかかわりはなかったのですが、絶対にそういう日が来ると思ったので、それに備えるために今から準備しなければならないと会社側に説明したのです。それから間もなくクラウドコンピューティングとか、Internet of Thingsの時代になりました。今、マイクロソフトの新しいCEOは、マイクロソフトはインターネットカンパニーだと言っています。
こういう政策の仕事をやるときは、マーケティングの人とか、弁護士の言うとおりに必ずしもしないほうがよいかもしれません。われわれがなぜ雇われたかというと、次はどうすべきかを提言するからです。そういう提言がないと、あまり政府にいる人は聞きたくない。「私はあなたと同じような戦いをしますので、一緒にやりましょう」と言うべきです。
桑島:政府に対して?
フォスター:そうそう。日本政府、または米国政府に対して。やはりわれわれがこういうビジネスをやるときは、米国政府と日本政府、米国のビジネスと日本のビジネスの架け橋にならないとダメです。
小さなことから信頼関係を深め、大きなことを実現
桑島:そこは非常に興味深いですね。企業の利益をいかに公的な利益というか、政府の利益とアラインさせることができるか。でもそこで難しいのは、日本政府に公的な利益と私的な利益というのは一致するんだよと示すことではないでしょうか。
フォスター:それにはやはり政府や企業の中で、自分に協力してくれる人物を探さないとダメです。ですから人と人の関係を大事にしなければならない。最初は小さいことから信頼関係を深めて、それでより大きなことができるのです。
桑島:キーパーソンをピックアップすることが大事ですね。
フォスター:そうそう。また、時にキーパーソンは邪魔者になりうるので、そのようなキーパーソンをいかにしてどけるか(笑)。また誰とでも会うことです。そのときは役に立たなくても、1、2年後は役に立つかもしれない。
桑島:これから日本政府も変わっていかなければいけないと思いますが、フォスター先生は、どうすれば日本の政府は変わることができるとお考えですか。
フォスター:ひとつは、やはり省庁再編です。特にインターネットに関して、インターネットエコノミーの新しいミニストリー(省)を作らないといけないですね。それから基本法を書き換えなければならない。これは白書のときから続けて訴えています。不幸にして日本の政界がこの5~6年間、混乱してまとまらなかったので、結局、それを実現できなかったのです。けっこう原口さんとは話ができたのですが、しかし、できた途端に鳩山政権が崩壊して、終わってしまった。
でも今、安倍政権にはそういう芽生えがある。もちろん安倍政権が一夜ですべてできるわけではないから、本当に10年間の作業だと思うのですが。しかし今、彼が取り組んでいる兆しがあるので、私は励まされています。
桑島:あと、お聞きしたかったのは、かつての日本企業、たとえばトヨタや東芝は、米国政府に働きかけて、自社に不利なルールを変えることにチャレンジしていました。盛田昭夫さんがいた頃のソニーは、たとえばユニタリータックスの問題がカリフォルニアで発生したとき、米国で草の根のロビイングやPRをやって、なぜユニタリータックスの制度がだめかということを全米各州で説いて回り、最終的にその制度をカリフォルニアからなくしていったりしたのです。
それはソニーの利益にもなったし、米国の利益にもなったひとつの例だと思います。しかし今の日本企業はこのような働きかけがいかに大事かをなかなか理解できていない。先生から見て日本企業のこの姿勢はどう見えますか。
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