米国ホンダの政府渉外に、日本人が学ぶこと

進出国との信頼関係はこう作れ!

ワシントンなど米国のホンダで政府渉外を担当してきた園田隆則氏
今、日本企業が世界で勝てない理由のひとつに、各国政府への働きかけ、つまり「ロビイング」不足があります。日本企業が今、身に付けるべきロビイングの技術とは何か。
前回記事に続き、自動車メーカー・ホンダの米国拠点にて、米国政府との渉外を担当してきた園田隆則氏(現在はモーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団 シニアフェロー)にお話を伺います。
※前回記事:『米国市場で生き延びる、ホンダ「影の努力」』はこちら

地元議員が、ホンダのことを知っているとはかぎらない

桑島:前回は園田さんが米国政府渉外のご担当として、危機管理マニュアルを作り、実行したというお話を伺いました。それについてさらに伺いますが、米国の議員たちとはどんな話をして関係をつくっていったのですか。

園田:そうですね。その前に、なぜ議員と密に連絡をとる必要があるかというお話をしたいと思います。

たとえば2000年代の頭にフォードでは、ブリヂストンの子会社であるファイアストン社製のタイヤのリコール問題が起きました。あのとき議員のひとりが、ブリヂストンの工場が自分の選挙区にあるにもかかわらず、そのことを「知らなかった」と言いました。それ以来、私たちは「地元の議員がホンダの事業を知っているとは決して思い込んではいけない」と肝に銘じたのです。

それからは「今、どこでどういう製品を生産しています」「どれだけ米国人の従業員が働いています」「給料はいくらで、税金は総額でいくら払っています」「輸出総金額は何百億です」というような話をしっかり伝えるようにしました。

われわれは景気の変動によって、どうしても工場を一時的に閉鎖するときがあります。そのときにはメディアに発表する前に、その州の議員に電話して、「明日こういう記事が出ます。決して驚かないでください」と伝えました。なぜなら、いきなりメディアから知らされて、「どう思いますか」と聞かれると、議員も何と答えていいかわからないときがある。そこで「ホンダはちゃんと雇用を守ってくれる、心配いらない」と言ってくれるようにしておくためです。

なぜそういうことが大切かというと、中国のオイル会社のCNOOCが、カリフォルニアのオイル会社ユノカルを買おうとしたことがあります。またドバイの企業が米国に港の設備をもつ英国企業を買収しようとしたときは、猛烈に議会が反対しました。報道によると、どうやら議員はプロジェクトの中身をよく知らなかった。それで記者に電話で質問されて、反射的に「中国企業が買うのはけしからん」と答えてしまった。

議員さんというのは、知らないことでも聞かれたら何か言わないといけないから、国のためになるようなことを直感で言う。でもよくよく説明すると、実はわかるような話もあるはずです。だからわれわれが得た教訓は、議員さんは絶対に驚かせてはならず、事前に正確な情報をしっかり伝える、ということでした。

次ページ即時に対応できるかが決め手になる
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 憧れから一歩前へ! キャンピングカーのある日常
  • 映画界のキーパーソンに直撃
  • ソロモンの時代―結婚しない人々の実像―
  • iPhoneの裏技
トレンドライブラリーAD
人気の動画
京セラのガラパゴススマホ「トルク」がたどり着いた境地
京セラのガラパゴススマホ「トルク」がたどり着いた境地
「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由
「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由
「雑談で笑いを取れない人」が知らない基本原則
「雑談で笑いを取れない人」が知らない基本原則
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
激動相場に勝つ!<br>株の道場

6月18日発売の『会社四季報』夏号が予想する今期業績は増収増益。利益回復に支えられる株価が上値を追う展開になるか注目です。本特集で株価が動くポイントを『会社四季報』の元編集長が解説。銘柄選びの方法を示します。

東洋経済education×ICT