園田:たとえばですが、われわれはいろいろな議員との面会を自分たちでやります。ロビイストとして議会に登録して、ほとんど自分たちで行く。ただし、われわれがなかなか会えない議員さんもいます。そういう議員さんに対しては、共和党系と民主党系、それぞれひとりずつロビイストを雇って、彼らにやってもらう。
でも基本は手作りです。自分でやる。それはホンダの車の売り方も造り方もそうです。”Holding torch”、「タイマツをわが手に」とよく言いますけども、やっぱり自分で責任を持って行動すれば、その反応がいちばんよくわかる。ですからどこかのローファームを使ってGRをするとはまったく考えたこともありませんでした。
桑島:なるほど。
園田:彼らがいくら勉強したって、中の人間以上にホンダをわかる人はいない。われわれが説明するのがいちばん確実だし、効果的です。ただし、米国にはロビイング法という非常に厳しい法律があります。4半期に1回、詳細にロビイングレポートをまとめて提出しないといけない。ロビー活動をやったかやらないか、カネを使ったとしたら、いつ、何のために、いくら使ったか。ここまでやっている企業は、日本企業ではあまりないでしょう。ものすごく手がかかりますから。
米国には、代案を出して議論する場がある
園田:ところで、日本と米国の違いについて言うと、日本の場合、政府はいつも正しいことをやっているという大前提があると思います。
桑島:そうですね。でもそれが間違っていたりするときもあります(笑)。
園田:そう、必ずしもそれが正しいというわけでもない。日本にいちばん不足しているのは、代案を提出して議論する場です。それが米国にはある。彼らは政府が必ずしも正しいことをしないとわかっている。そこにカネを渡すなら、自分たちでそのおカネをNGOなどに渡して、政策を提案させたほうがいいというのが米国です。
私なんかはむしろ、米国式のやり方のほうが性に合います。たとえば2001年9月11日にテロ事件がありました。あの後、米国ではパトリオット・アクト(愛国者法)という法律ができましたけども、それを作るため、どれだけ公聴会を開いたか。私が調べたら、司法省は100回ぐらい、いろいろなデータを提出しています。
一方、日本の特定秘密法を審議していたときは、1回単発的に説明会を開いたことはありますが、本当の意味での公聴会は一度も開かれなかった。政策というのは、国民が参加して初めてマジョリティに益を与えるものが出てくるのですが、そうはなっていません。
桑島:いかにして日本政府にわれわれの声を届けるか。これは非常に重要なテーマですね。
ビジネスの話で言うと、これから米国への直接投資が増えることが予想されますが、あまりに備えができてないという感覚があります。その点、ホンダさんは30年の蓄積がある。日本企業はこれからどうすればいいのか、アドバイスをいただけますか。
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