ホンダ新社長、就任直前に専務昇格のワケ 用意された3カ月の助走期間
異例尽くしの抜擢人事で自動車業界の関係者を驚かせたホンダの社長交代。伊東孝紳社長からバトンを引き継ぐのは、常務執行役員の八郷隆弘氏(55)だ。創業以来の慣例だった子会社の本田技術研究所社長を務めるというステップは経ず、いきなり陣頭指揮を執ることになる。
現在、八郷氏は中国生産統括責任者として現地法人2社の副総経理を務めているが、3月下旬にも帰国し、4月1日付で専務執行役員に昇格する。しかし、社長就任は6月の株主総会後。3カ月にも満たない超短期間の専務としての役割には、いったいどんな意味があるのか。
経営会議のメンバー入り
ここから見て取れるのは、異例のトップ人事を受けたホンダなりの”思慮”だ。同社には「取締役会」とは別に、専務以上の執行役員で行う「経営会議」がある。現在のメンバーは、伊東社長、岩村哲夫副社長(アメリカンホンダ会長)と、山本卓志氏(ホンダエンジニアリング社長)、山本芳春氏(本田技術研究所社長)、福尾幸一氏(本田技術研究所副社長)、峯川尚氏(日本本部長)という4人の専務執行役員から成る。
経営会議では、二輪、四輪、汎用の各部門に関する様々な課題を議論し、中期経営計画の策定など今後の方向性を決める重要な役割を担っている。テーマに応じて、各部門の担当役員も出席し、会議は月に数回程度行われている。
次期社長の八郷氏が4月から専務執行役員になるということは、この重要会議のメンバー入りを意味する。
社長に就いてからいきなり経営会議に出ても、全社的な課題をきちんと認識したうえで、的確な判断を下すことは難しい。そこで、4月から会議に参加し、「できるだけ早く経営全体を把握してもらい、社長の職務に活かしてもらう」(ホンダ広報)。いわば、専務執行役員としての3カ月間は、社長就任までの”助走期間”という位置づけだ。
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