「ミスター外圧」はこうして政治を動かした 慶應大学ジム・フォスター教授に聞く(後編)

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フォスター:企業が姿勢を変えればいいというより、まず政府、アカデミア、産業界の間の壁を崩さないとダメですね。政策決定プロセスを図にすると、政府、アカデミア、企業の三角形になりますが、この中で全然、人やアイデアが循環していない。

3者の間で、自由に出たり入ったりすることがありません。政府の人がアカデミアに入ったり、アカデミアの人が企業に入ったりして、違う畑の種を違う畑に持っていくことで、全体が強くなるのです。それに企業と企業の間も循環がほとんどない。日本でスタートアップがなぜ少ないのかというと、優れた経営の才能が大きな会社に固定されているからです。

政府、アカデミア、産業界の間の壁を崩す

米国ではみんな頻繁に仕事を変わります。たとえば同じ仕事を6年間やると、「あの人はちょっと出来が悪い」という目で見られる。つまり30年間同じ会社に勤めたということは誇りではないのです。そういう意味で、私は25年間も国務省にいましたから、いつもお詫びするのです(笑)。

私はマイクロソフトに行くまでインターネットの仕事はいっさいやっていなかったのに、今ではインターネット政策は私の大学の授業のテーマのひとつですね。それで人生が変わったのです。だから人生では、ときどき違う分野で仕事をしないといけないですね。

また、就職をするとずっと企業の中でトレーニングを受けるけれど、違う世界の人と接触するチャンスは少ないですね。そういう意味で、企業も、政府も、アカデミアも含めた日本社会全体が、オープンにならなければいけないですね。これは私の今の専門分野からいうと、やはりインターネットの力をもう少し理解してほしいです。それが本当に新しい日本の経済を作るためのベースになります。

桑島:わかりました。そのとおりですね。今日はありがとうございました。

(構成:長山清子、撮影:今井康一)

桑島 浩彰 青山社中CFO

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くわじま ひろあき / Hiroaki Kuwajima

1980年石川県生まれ。東京大学経済学部卒業。ハーバード大学経営大学院/行政大学院修了(経営学修士/行政学修士)。

三菱商事株式会社、ハーバード大学留学を経て、株式会社ドリームインキュベータ (日系戦略コンサルティングファーム)に入社。国内大企業のグローバル戦略立案及び実行支援に従事。2012年5月青山社中株式会社 共同代表CFO就任。

2014年アイゼンハワーフェロー日本代表。グロービス経営大学院MBAプログラム講師兼任(2015年1月より)。米国、中国、アジアなど日本の政治経済に関する海外講演多数。

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