イギリス人が「横浜のドヤ街」で見た"日本の断面" 寿町、インテリ日雇い労働者もいた30年前から現在まで

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町全体もきれいで静かになっているという。1990年代は立小便をする人や路上で寝る人などがたくさんいたが、現在はいない。これは健全になったというより、やはり人々のエネルギーが少なくなったことの表れだという。

筆者が宿泊した部屋。3畳ほどでインターネットはつながった(写真:筆者撮影)

ドヤ街は、日本全国の問題がいち早く発生する場所

「労働者たちがプライドを置き、かつて批判していた政府や国家から生活保護を受給している現状がある。町の魅力も薄くなってしまって、複雑な気持ちです」とトムさんは遠くを見つめる。

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そして、今後はさらに高齢化が進み、福祉の助けを必要とする人も増えていくのではないか、と続ける。すると直面するのが、横浜市の財源の問題。数年後にはどうなってしまうのか……と憂う彼の話を聞きながら、寿町という小さな一角の現状が、日本全体の問題に重なった。そう伝えると、トムさんは大きくうなずいた。

「ドヤ街は炭鉱のカナリヤ。日本全国の問題がいち早く発生します。寿町で起きていることは、近いうちに日本全体でも起きるのではないでしょうか」

取材を終えて、寿町を後にする。最寄りの石川町駅のすぐ裏手には中華街があり、せっかく来たのだからと散策してみた。派手な街並み、にぎわう人々、あふれる活気、美味しそうな匂いの店……僅かしか離れていないのに、全く違う世界が現れた。それでも寿町で見た景色やにおいや音は、しばらく頭や身体から離れなかった。

肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト

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こえぬま かずゆき / Kazuyuki Koenuma

1980年東京都生まれ。ルポルタージュや報道系の記事を主に手掛ける。著書に『究極の愛について語るときに僕たちの語ること』(青月社)、『フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。』(実務教育出版)。東京・新宿ゴールデン街の文壇バー「月に吠える」のオーナーでもある。ライフワークは愛の研究。

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