2024年に家を買う人が知っておきたい業界事情 消費者も"自衛"、信頼できる業者の見極め方

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もちろん、キャッシュを求められたからといってすべて疑ってかかる必要はない。見るべき点は「きちんと工期が設定できているか」ということ。

人手不足や原価高騰の影響による“しわ寄せ”は現場に集まる。職人が集まらない、現場監督が多忙で巡回の頻度が低いなどの結果、最終的には品質低下につながるおそれもある。

一般的な一戸建てであれば4~5カ月程度の工期が設定されることが多く、極端に短い工期に設定されていないかどうかは、会社の信頼度を左右する大きな判断材料と言えるだろう。

たとえば工期がやたらと短い、工事のスケジュールを定める「工程表」自体がないなどの場合は突貫工事の可能性が考えられる。また、基礎工事なら配筋、コンクリート打設の担当などがいて、上棟後は大工が中心になるなど、家を作る工程は多様だ。

工程ごとに必要な作業、職人は異なってくる。それぞれ必要な工事に職人を集めることができなければ、工程をうまく進めることができないため、「無計画」な工事となってしまう。

「無計画」な工事には注意

工事の計画がきちんと立てられていないため、いざ着工してみると「基礎工事が全然始まらない」「基礎工事後の養生期間から一向に上棟工事に進まない」などのトラブルに見舞われた事例もある。さらにある工程で放置されたまま、いつの間にか建築会社、施工会社が倒産してしまった……などのケースもあるため注意が必要だ。

一方で、突然予定日時より工事が前倒しで始まる場合は「無計画」な工事となる。この場合も進捗を注視していかなければならない。

新築工事の不具合発生率
2019年〜21年にさくら事務所が検査した新築工事で、不具合が発生していた工程を割合で示したもの。不具合の内容はさまざまだが、ほとんどの住宅でなんらかの問題点が発覚していた(画像:さくら事務所)

現場の状況に疑問が出た場合、臆せずに「着工日と聞いていたのに、工事が全然始まらないのはどうして?」「基礎が終わった後、工事がストップしています」など現場監督に確認を取ってみることをおすすめする。

また自分で現場に行ける方は実際に現場で状況を見てきてほしい。それが難しいのであれば、「2週間に一度くらい、進捗状況を教えてほしい」と写真の共有などを含め、現場監督にお願いしておくのもいいだろう。

現場の状況については、自邸以外の現場を共有してくれる、見学させてくれるかどうかも大切だ。もし見学を渋るようなら、「見られたくない何かがある」とより細心の注意を払う必要も出てくるだろう。

こちらも契約時と同様、家を購入する側が「主体」となって工事に関わっていくことが重要となる。

建築資材・原材料の高騰、慢性的な人材不足に加え、働き方改革の“2024年問題”、インボイス制度導入と建築業界を取り巻く状況は厳しい。だからこそ家を購入する自分たちが「自衛」する意識を持って、主役として家づくりに関わっていく知識と覚悟を持つことが今後も大切になっていく。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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