若手の「びっくり退職」に上司が気がつけない事情 周囲が驚く「突然の退職」が増えている背景3つ

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40代ぐらいの若い経営者が社会課題を解決したいというパーパスを掲げ、事業を成長させる姿を見せたら、

「カッコいい」

「こんな会社で働きたい」

と心を動かされるだろう。これも条件の1つに数えられる。「ワクワク感」「ドキドキ感」は、お金には変えられないインセンティブだ。

しかもスピードがものをいう時代。

新卒一括採用の文化がない企業なら、ドンドン新しい人が入ってくる。そんな成長企業になら、1カ月、2カ月遅れて入社しただけで出遅れ感を味わう。はやく入社しないと年齢が同じでも後輩になってしまうのだ。

「来期になってから」

「今の仕事がひと段落したら」

などと言っていられない。人材紹介会社の営業攻勢は凄まじい。好条件を提示されたらすぐ決断し、すぐに転職したくなるものだ。

なぜ「びっくり退職」する前に相談しないのか?

「びっくり退職」が増えている2つ目の理由が、「SNSの普及」である。

昨今、若者の相談相手はSNSで知り合った「本名も知らない誰か」であることが多い。

昔なら、上司に相談できないことは、同僚や先輩などに打ち明けたものだ。

・会社に不満がある
・将来のキャリアについて悩んでいる
・人間関係で困っている

このような相談をきっかけにして、職場は対策をとることができた。

「絶対に課長には言わないでほしい、と言われていますが、実は……」

と課長の耳に入ることで、

「そうだったのか。ありがとう。気を付けるよ。そんなに悩んでいるだなんて思わなかった」

と上司である課長も対策をとることができた。社内に相談相手がいることで、本人からのサインを見逃すリスクを回避できた。

しかし今はそんな時代ではない。気の許せる相手は、X(旧ツイッター)やインスタグラムで知り合った誰かということも多い。

何を隠そう、私にも匿名の人物からSNSを通してたくさんの相談が舞い込む。私は素性を明かしているので、相手の若者は私が54歳だということも知っている。経営者だし、コンサルタントなので、どちらかというと会社側に立つ人間だ。なのに、

「将来のことを考えたら、転職したほうがいいですよね?」

「転職して能力が開花したと横山さんも書籍に書かれていますよね」

こんなデリケートな内容をDMで相談してくるのだ。

他者からは衝動的な決断のように見えるかもしれないが、今はものすごいスピードで意思決定できる環境が揃っているのだ。

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