夫と死別、70代女性につきつけられた残酷な現実 戸建てを売って生活を楽しみたいだけなのに

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家に着いて落ち着きを取り戻した頃、片付いた部屋を眺めながらこんな疎外感を味わうために断捨離をしてきたのかと、少し情けなく感じました。これが高齢者が1人で生きるということの現実なのでしょうか。

せっかく重い腰を上げて引っ越しに向かって作業もしてきましたが、このままこの戸建てに残るのか、それとも老人ホームに入所するしかないのか、自分でもわからなくなってしまっていたのです。

真千子さんから事情を聞いて驚いた長男の誠さん(仮名・49歳)が、大学時代の友人で不動産会社を経営している中西さん(仮名・51歳)のことを思い出しました。

なぜ賃貸物件を借りられないのか

すぐに連絡をとってみると、中西さんの口からは、高齢者の賃貸について驚くようなことばかりが飛び出してきました。それを要約すると……。

●70歳を超えるとほとんど部屋は貸してもらえない
●家賃の価格帯によって差はなく、どの金額帯でも貸してもらえない
●家主は高齢者に部屋を貸すより空室のほうがまだマシだと思っている
●家主は事故物件(孤独死)になってしまうことを怖れている
●認知症になったときの対応に困る
●建物を建て替えるときに退去してもらえず困る
●家賃を払ってもらえるのか心配

中西さんが挙げた理由は、ざっとこのようなものでした。

確かに家主側の思いもわかります。ただ、真千子さんの場合、家賃も払えるし、息子たちがいるのですから、何かあったとしても放置はしません。それほど家主側に迷惑をかけることはないと思うのです。

中西さんはそれを聞いても、家主側の理解はなかなか得られないとつぶやきました。

「気持ちはわかるんだけどね。一度貸してしまうと借り手の力のほうが強いから、日本の家主の権利は二の次でさ。だから家主としては、どうしても敬遠してしまうんだよ。制度と今の日本の情勢が合ってないんだな」

中西さんはそう言いながらも、UR(UR都市機構)なら高齢者でも借りやすいということを教えてくれました。

確かにURは入居者側に細かい条件はなく、支払えるということを証明すれば貸してもらえそうです。ただ、真千子さんの希望であった駅近でアクセスのよい物件はほとんどありません。

大半は駅からバスだったり、人気の高い路線ではありません。

「住む」ことを重視するなら生活環境もいいのでしょうが、それなら今の戸建てとさして変わりません。真千子さんからすると、せっかく身軽になったのだから、人生を楽しむための引っ越しがしたかったのです。そうなると絶対に譲れない点は、「駅近」です。

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