その理由は、単身者は今まで「寝るだけ」の部屋で良かったところ、「仕事部屋」的な要素も求めざるを得なくなり、広さ的に条件を満たさなくなってしまったからです。その結果、単身者世帯用の狭い部屋は、空室が目立つようになりました。
ところが、その空室が目立つ狭い部屋ですら、70歳になるとなかなか借りられません。
空室があって、それを借りたい人がいて、相互に求めているものが合致しているようにも感じますが、高齢者はほとんど貸してもらえないのです。
実際どれくらい借りられないものなのでしょうか?
50件問い合わせをして、高齢者に部屋を貸してくれそうな対応は2~3件といわれています。真千子さん(仮名・78歳)も部屋が借りられず、ほとほと困り果てました。
もともとはご主人名義の持ち家に住み、2人のお子さんもその家で育て上げました。息子たちも立派に成人し独立していくと、老夫婦には一戸建ては大きすぎるね……と、ご主人とも話し合っていました。
それでも長年住んだ一戸建てからの引っ越しは、荷物の整理や断捨離も大変です。物理的に荷物の量を減らしてサイズダウンしないと、引っ越しの意味がなくなります。高齢になればなるほど、その負担は計り知れません。
そのため、孫が遊びに来たときに戸建ては飛び跳ねても安心とか、息子たちが家族で来ても皆で泊まれると、さまざまな理由を付け、ついつい引っ越しを先延ばしにしてきました。
そんな孫たちもいつしか大学生になり、祖父母の家に近寄らなくなった頃、最愛のご主人が心筋梗塞であっけなくこの世を去ってしまいました。
駅前のアクセスのよい部屋
大きな5LDKの戸建ては、真千子さん1人で住むには広すぎます。ご主人がいなくなってからは、夜の物音にも敏感になってしまい、眠りも浅くなるなど、いよいよ引っ越しの必要性を感じるようになってきました。
そうなると新居に夢が膨らみます。せっかく思い切って断捨離するのですから、今度は駅前のアクセスのいい場所に住みたいと考えました。
真千子さんの住んでいた戸建ては、街の喧騒から少し離れた郊外にあります。生活するには静かで快適なのですが、1人で住むには少し静かすぎるのです。またちょっと出かけようにも、駅まで10分以上歩かねばなりません。
若い頃は「早く戻ってご飯を作らないと」とか、「子どもが帰ってくるから」と、出かけても気忙しかったのが、今や何の制約もありません。今まで行きたくても行けなかった美術館や展覧会にコンサート……。そんな文化的な生活を楽しむためにも、ぜひ交通のアクセスのいい所に住みたい! と強く思いました。
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