しかし加齢やけがによってこれらの動きがじゅうぶんできずに、皮膚が圧迫され続けると褥瘡が生じてしまいます。寝たきりや車椅子での生活に至らなくても、運動量が落ちて座っている時間が長い方や、関節を痛めて寝返りがうまくできない方も注意が必要です。なお、糖尿病による神経障害で身体の不快感がわかりにくくなっている方も褥瘡のリスクが高いといえます。
もう1つは、皮膚が弱くなっていて圧迫の影響を受けやすい方です。原因としては、抗がん剤やステロイドを長く使っている、加齢でものが食べられなかったり過剰なダイエットをしたりすることで栄養状態が悪いことがあげられます。また介護現場では汗や排泄物で皮膚がふやけることが原因の場合も多く、こまめな清拭や入浴が大切といえます。
初期ならば自宅で対処できるので、早期発見が大切
褥瘡の初期の症状は、痛みをともなう皮膚の赤みや腫れ、水ぶくれです。これを放置していると面積と深さがどんどん広がって、えぐれたような傷になります。血流が悪い状態がさらに続けば、その部分の組織が壊死してしまい皮膚が黒くなります。壊死した場所は身体のバリアともいえる皮膚が破綻しているわけですから非常に感染しやすく、敗血症など命に関わる感染症につながりたいへん危険な状態です。
治療は初期の状態であれば保湿剤や軟膏を使って自宅で対処することができますが、症状が進むと壊死した組織を切除する(デブリードマン)、感染症治療のために抗菌薬を投与するといった医療機関での治療が必要となります。褥瘡は医療技術や塗り薬などの発達で比較的きれいに治るようになってきていますが、治癒するまでに数カ月から数年かかることも珍しくありません。そのため、早期発見のためにも、家族が皮膚の痛みや違和感を訴えたら一緒にその部分がダメージを受けていないか確認するようにしましょう。
明らかな傷がなく、皮膚が赤いだけの場合は一見、褥瘡かどうかがわかりづらいですが、実はその部分を数秒間、指で押すことで簡単に判断することができます。押したときに赤みが消えなければ、すでにその部分の血管が圧迫によって破れて赤血球が漏れ出していると考えられ、褥瘡の初期状態といえます。
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