座りっぱなしに注意!「床ずれ」は誰にでも起こる 初期症状は、痛みをともなう皮膚の赤みや腫れ

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反対に、押すと赤みが消えて白っぽくなる場合は反応性充血とよばれ、圧迫によって一時的に血管が広くなった状態です。日常的な例で言えば、腕を枕にして机に突っ伏して昼寝をしてしまった後に、額や腕が赤くなってしまった状態と同様です。しかしこの反応性充血も、赤みが出るような状況を放置すれば褥瘡につながるため早めのケアが大切となります。

一番重要なのは、こまめに身体を動かす事

では、褥瘡のケアはどのようなことに気をつければ良いのでしょうか。一番重要なのはやはりこまめに身体を動かす事であり、寝たきりであっても2時間に1回は体の向きを変えること(体位変換)が勧められています。褥瘡予防の柔らかいマットレスを使って圧迫を軽減することもでき、これは介護保険で安くレンタルすることができます。睡眠や栄養を摂ることで免疫力を高めることも予防に有効です。

傷ができてしまった場合はまず皮膚科やかかりつけの内科に相談しましょう。自宅での治療が可能であれば、感染症を恐れて消毒をしすぎると傷を治す細胞までいなくなってしまうため、シャワーで洗浄して傷口をきれいに保つことが治癒への近道です。入浴ができる場合は、傷口はぬるめのシャワーで洗い流し、石鹸やボディソープは低刺激性のものを傷のまわりにだけ使うようにして、直接傷口につかないようにしましょう。

湯船に浸かる場合は傷口を薬局などで購入できるドレッシング材(皮膚用の被覆材)で覆います。洗った後は清潔な乾いた布で押さえるように水分をしっかり取り、素手が傷口に触れないようにヘラなどで軟膏を塗ってからガーゼやドレッシング材を当てます。なお、寝たきりの場合はペットボトルにぬるま湯を入れて流しても構いません。ただし、傷の状態によってケアが異なる場合もあるため、事前に医師や各種介護サービスの担当者に指導を受けるようにしましょう。

褥瘡は早ければ1日で初期の傷ができると言われています。そのためすべてを予防することは難しいですが、ご自身や家族の皮膚チェックを習慣にすることで早めに対処することができます。健康な皮膚を保つためにも、ぜひこの機会に生活や介護を見直していただけたらと思います。

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上原 桃子 医師・産業医

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うえはら ももこ / Momoko Uehara

横浜市立大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構理事。身体とこころの健康、未病の活動に尽力し、健康経営に関する医療系書籍の編集にも関わっている。医師と患者のコミュニケーションを医療関係者、患者双方の視点から見つめ直すことを課題とし、とくに働く女性のライフスタイルについて提案・貢献することを目指している。

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