「戦場での取材」私たちが知らないリアルな裏側 渡部陽一さん「戦地には絶対に1人では行かない」

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現地のスタッフは外国人の僕にはわからない、ちょっとした違和感を肌で感じ取り、危険を察知します。そのため彼らから「ここで引きましょう」と言われれば必ず従います。僕が何十回と取材し、この地域のことはわかっていると思っていても、です。取材を欲張らず、撤退する勇気を持つこと。これが戦場報道の危機管理、安全を担保する土台となっています。

戦地の取材で必要なのは8割が安全危機管理や情報管理など事前の段取り、2割が戦場に立ってからの撮影やインタビューの技術だと考えています。これが僕の戦場カメラマンとしての個人的な仕事の向き合い方の線引きです。つねに安全第一、取材はその次。この優先順位が動くことはありません。

渡部陽一さん(撮影:尾形文繁)

――ゆっくりとした話し方は意識されているのですか?

幼少期のころから話すスピードがゆっくりでした。小中学生のころは友達から「渡部くん、話し方が変だよ」といつも言われていたのですが、幼かった僕は言われている意味がよくわからず、そのまま大きくなってしまいました。

ただカメラマンになって世界中を飛び回るようになると、言葉が通じない地域でも知っている単語をゆっくり話せば相手も必ず耳を傾けてくれました。そんな日々を31年も送ってきたので、もともとの話し方に拍車がかかり、もっとゆっくりになってしまったようです。

戦場のイメージと現実

――新著『晴れ、そしてミサイル』のタイトルに込めた思いは?

戦場と聞けば、どこもかしこも破壊されて燃え尽き、すべてが壊滅されたイメージを持たれる方が多いと思います。しかし実際、現地に降り立つと、最初は「どこが戦場なんだろう」と思うほど、ごく普通の街並みが広がっていることもあります。

僕は現地のガイドや通訳の家にお邪魔させてもらって取材を進めるので、戦地で暮らす人々の様子を間近で見てきました。争いや紛争が起きている国や地域でも、一般市民にとっては朝起きて、ご飯を食べて、仕事や学校へ行って、家族とともに過ごして眠りにつく、という日常が繰り返されています。

もちろん巡航ミサイルが飛んできたり、自爆テロや市街戦が起きたり、突発的な危機はあります。しかし危機が去れば、また家族の日常が淡々と繰り返されていく。

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