「戦場での取材」私たちが知らないリアルな裏側 渡部陽一さん「戦地には絶対に1人では行かない」
激しい攻撃を受け焼き尽くされた一般市民の家、蜂の巣のような銃撃痕が残る乗用車、無惨に殺害された遺体の数々……。一般市民の大量虐殺は国家権力で情報統制され、その事実が伏せられてしまうこともあります。戦場カメラマンはその事実を明らかにするため、写真によって戦争犯罪の証拠を集める役割もあるのです。
「戦争の犠牲者はいつも子どもたち」
――戦場カメラマンになったきっかけも、ジェノサイドだったそうですね。
20歳のとき、大学の授業で知った狩猟民族・ムブティ族に会いたいとバックパッカーでアフリカへ向かいました。しかし現地に降り立つと、ジャングルの一帯ではルワンダ内戦が勃発し、民族間の衝突によって100万人近い方々が犠牲になっていたのです。しかし血だらけの子どもたちが目の前で泣いていても、学生だった僕は1人も助けられませんでした。
そのときの無力感から自分にできることは何かを考えました。思いついたのが子どものころから好きだったカメラで戦地を撮影し、1人でも多くの人に戦争の犠牲になっている子どもたちの姿を知ってもらいたい、ということ。「戦場カメラマンになる」という“鉄の杭”が自分の心に打ち込まれた瞬間でした。
その後、31年にわたって戦地での撮影を続けてきました。戦争や紛争は民族や宗教の違い、資源や領土をめぐる問題など、さまざまな理由で起こりますが、どの戦場でも変わらなかったこと。それは「戦争の犠牲者はいつも子どもたち」だという現実です。
戦争で傷つき、泣いている子どもたちの声を世界へ届けるため、危機管理を徹底しながら僕はこれからも戦地でシャッターを切り続けるつもりです。
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