このあたり、制作陣も同様だったようで、今回、主題歌と音楽を担当した服部隆之(羽鳥善一のモデルとなった服部良一のお孫さん)は、NHKドラマ・ガイド『連続テレビ小説 ブギウギ Part1』(NHK出版)でこう語っている。
――そうこうしているうちに、主演が決まってから歌のトレーニングをしていた趣里さんがどんどんうまくなっていて、これは(註:主題歌『ハッピー☆ブギ』を)彼女に歌ってもらうのがいいんじゃないか、という話に自然になっていったんです。
――趣里さんは俳優さんですから、歌に感情を込めるのはもちろん上手なのですが、今では魅力的な声を持った一人の歌手として、独特の世界を作り出しています。
進境著しい歌唱力を見せつけたのは、先述、第30回の『ラッパと娘』だ(余談だが、笠置シヅ子版と同じAmのキーで歌い上げた)。
そもそもこの曲、音粋が広く(真ん中のA=A3から、上の上のD=D5)、音の跳躍も多く、また俗にブルーノートというデリケートな音=「♪(バド)ジ(ズ)デ(ジドダー)」のE♭=が多く出てくる難曲である。
対して趣里は、踊りの経験も活きたであろう抜群のリズム感をベースに、(笠置シヅ子版を『ジャングル・ブギー』の歌詞にある「女豹」だとすれば)まるで野良猫(褒め言葉、それも高水準の)が暴れ回るような迫力でシャウトして、視聴者を魅了した。
紅白歌合戦で主題歌を披露する?
サイト「スポニチアネックス」(11月10日) によれば、今年の紅白歌合戦に「生歌唱する方向で最終調整」されているらしい。そういえば、伊藤蘭の出場も決まった。母娘共演もいいが、それよりも橘アオイ(翼和希)や秋山美月(伊原六花)との共演が見てみたい。
以上、趣里の奮闘に付け加えたいのは、展開の速さである。第7週までで1926~1939年の14年間、幼少期からUSG(梅丸少女歌劇団)入団、労働争議、香川帰省(出生の秘密を知る)、東京進出、演出家との恋愛、「日宝」への移籍騒動、秋山美月との別れ……と、展開がてんこもりだった。
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