実は、ソフトバンクは2018年にアームチャイナの株式の51%を中国政府系ファンドなどに売却。アームの出資分は49%に減っており、実質的な経営権は中国側に移っており、アームはアームチャイナに対して経営上何も言えなくなっていたのである。
依然ソフトバンクが大株主であるものの、上場企業として再出発を果たしたアームはこれからどう成長していくのか。まずはこれまでの戦略を振り返って考えてみたい。
強みはアームならではの「設計思想」
アームのCPUコアの最大の特長は、低消費電力である。モバイル市場を狙っていたため、創業当初から性能はそこそこでかまわないから消費電力を徹底して下げよう、という設計思想であった。それでも基本は32ビットアーキテクチャーとした。
1990年代の初めに創業者のロビン・サクスビー卿が来日した際、筆者がアームIPコアの特長を尋ねても、高性能・低消費電力としか言わなかった。当時、日立製作所のSHマイコンとは何がどう違うのかを尋ねてもそれしか言わない。正直言って「胡散臭いイギリスのビジネスマン」という印象だった。
しかし、当初からモバイル機器の電池を長持ちさせるためアームのIPコアの低消費電力は歓迎され、ゲーム機や携帯電話に採用された。携帯電話がスマホに移行し、性能向上の必要性に迫られても、アームでは消費電力の低減は最優先で設計された。
その後は、低消費電力を維持しながら性能を追求。32ビットから高性能版は64ビットへと移行しながらも低消費電力化は続いている。
スマホに使われるモバイルプロセッサーのCPUコアには「Cortex-A」シリーズ、制御命令の多いマイコン向けには「Cortex-M」シリーズ、リアルタイム動作を狙った「Cortex-R」シリーズなどがある。さらに新しい高性能なコア「Cortex-X」としてシリーズも追加している。
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