さとうほなみ「俳優×ミュージシャン」への本音 もともと役者として小学生から活動していた
さとう:逆に、監督は「祥子が暗い」と仰ったけど、私はそう思ってないんです。祥子は選択を間違っただけで、本当はちゃんと人に心も開けるし、すごくいろんな顔を持ってる子だと思っていました。
樋口:人間はそう一面的に捉えられるはずもないですからね。ますますわからなくなってきましたが(笑)。
「祥子が選んだ行動の理由は、観た人に感じてもらいたい」(さとう)
樋口:ところでオープニングから出てきますが、祥子が選んだ心中という行動について理解できる部分はありますか?
さとう:祥子も栩谷も伊関も確かにどこか不安定なところがあるんですが、そういう、何もないのにふと不安が襲ってくるとか、疑問を抱いていたものが時折爆発してしまうみたいなことって誰しもあるような気がしていて。完成した映画を見て、そういう共感性がある作品だなと思いました。
樋口:なるほど。
さとう:ただ、祥子が選んだことの理由については、観た人に感じてもらいたいので、私は言及しないようにしてるんです。でも、監督はパンフレットのインタビューで普通に仰ってました(笑)。監督の見解は、私の見解とはまた違うんですけど。
樋口:ひょっとしたら自分も、ミュージシャンや俳優として世に出ていなかったら『花腐し』になっていたかもしれないとか、祥子のような選択もあり得たんじゃないかと想像したことはありますか?
さとう:それはないかな……。祥子の選択はすごく切ないもので、世間にもこういう選択をしてはいけないというのが大前提としてありますよね。この作品で祥子は2人の男性の思い出話の中にしか登場しないので、祥子がその選択に至るまでの葛藤というのは多くは描かれてはいないんですけど、私の中ではやっぱりそういう判断は想像できないと思います。
樋口:今回、荒井監督がさすがだなと思ったのは、モノクロとカラーの使い方。作中に大滝詠一さんの「想い出はモノクローム。色を点けてくれ」※ってカバーが入りますが、祥子がいる時の回想だけがカラーで、祥子のいない今の現実はモノクロで見せるところが、なるほどと思いました。彼女がいたからこそ人生に彩りがあったという。
※大滝詠一の代表曲『君は天然色』の歌詞。