これは関連企業にとっては大きな影響を及ぼすが、外国人によるインバウンド消費の規模は、日本人の消費の規模と比べ小さいために、マクロ的に景気循環を左右するほど影響は大きくない。ただ、金融緩和強化で実現した円高修正が、日本の成長率の底上げをもたらす分かり易い例である。
金融緩和が「第3の矢」を後押していることが明白に
また、金融緩和によって潜在的に隠れていた観光需要が顕在化することは、外国人旅行者による消費拡大で、短期的なGDP成長率を押し上げるだけにはとどまらない面もある。
つまり、過去約20年間のデフレと超円高で抑制されていた外国人訪日客が増加することで、本来先進国にとっては有力な成長産業であるはずの観光業が、今後日本でも持続的に成長することである。
さらに、訪日客増加をきっかけに、国内の観光産業の発展に必要な、空港や交通インフラ拡充、またホテルなどの宿泊・建設投資拡大をもたらす可能性がある。
そもそも、金融緩和強化がもたらした超円高の是正によって、循環的に成長率を押し上げてデフレからの脱却をもたらすのが、本来の総需要安定化政策の第一の目的である。
それに加えて超円高の是正は、潜在的な成長余地があった観光産業発展のきっかけとなり、産業構造の多様化ももたらす。そして、長期的な経済成長の糧となる設備投資需要を誘発し、経済の供給側の成長力を底上げする経路を用意するということだ。
金融緩和強化であるアベノミクスの第1の矢で超円高が解消されたことは、資産価格の変動をもたらすだけではない。これまでの連載で述べてきたように、失業率を低下させて労働市場で新たな職を生み出した。
そして、超円高の是正が観光産業の拡大のきっかけになり、成長戦略とされる第3の矢を後押した意味でも、金融緩和強化が果たした役割は大きかったのではないか。金融緩和による超円高の解消は、日本の成長戦略の効果を高めると思われる。
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