「silent」チームの新ドラマが盛り上がりに欠く訳 配信トップ「いちばんすきな花」の惜しい点

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「いちばんすきな花」は、単にその人の性格だけでなく、世代や学生時代の環境などによって見方がガラッと変わる作品に見えるのです。その点、「silent」は“純愛”という世代や環境などを問わず多くの人々が共感しやすい作品だけに、一度火が付けば「いいね」が広がりやすかったのでしょう。

これを読んでいるあなたは、「セリフにいちいち共感できるし、4人を応援したくなる」「学生時代のあるあるが詰まっていて、自分と重ね合わせて見ている」のか。それとも、「いい大人なんだから自分目線の生きづらさばかり考えないほうがいい」「いいこともたくさんあったのだから、他人のせいにばかりしないで折り合いをつけるべき」と思うか。自分の価値観を知るドラマと言っていいのかもしれません。

より哲学的になったセリフの好き嫌い

「いちばんすきな花」で最も多いシーンが椿の家であり、そこで交わされる4人の会話がメインの作品であることは間違いありません。

そのセリフは「silent」と比べても、より哲学的。たとえば第4話の冒頭に、「“男女平等”っていい言葉になってるのって怖くない? 逆にどっちも生きにくいでしょ」「『必要な差別をしてもらえない』って何よりの差別ですよね」というセリフがありました。

また、第5話の最後には、「いいんだよ。(絵を)描いた人が実際どうかはさ。それ見た人がどう思うかでしょ。『優しい』って思った人にとっては『優しい』でいいんだよ。『きれいなお花だな』ってうっとりしてる人に『それトゲありますよ、毒ありますよ』ってわざわざ言わなくてもいいの。その人がどう見てるかでいいんだよ」というセリフがありました。

まるで村瀬健プロデューサーの「男女の友情は成立するのか」というお題に脚本家の生方美久さんがセリフで返し続ける禅問答のように見えてきます。「なるほど」と思わされるものから、「難しくてわからない」ものまで多様なセリフで構成した脚本は、生方さんが尊敬する坂元裕二さんを彷彿させますし、実際に4人の会話劇を見て「『カルテット』(TBS系)を思い出す」という視聴者も少なくありません。

その坂元さんに重ね合わせて考えると、「いちばんすきな花」(生方さん)は「カルテット」(坂元さん)、「silent」(生方さん)は「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(フジテレビ系、坂元さん)に近い作品と言えるのではないでしょうか。

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