現場では国境警備隊南東地区副隊長のユッカ・ルッカリ氏や、建設責任者のイスモ・クルキ氏らが説明に立った。
フェンスが完成したのは2023年の夏で、数カ月間、試験的な運用を行ってきた。その結果、フェンスの有用性が確認できたという。
「フェンス設置前は毎日、国境地帯をパトロールしていたが、設置後は頻繁にパトロールをする必要はなくなった。監視カメラや警報装置は司令部でモニターし、フェンスが設置されていない区間を重点的にパトロールすることになる」(ルッカリ氏)
ロシアが意図的に国境に向かわせている
2015〜2016年、欧州連合(EU)諸国に多数の移民が流入した「難民危機」の際、フィンランド北部ラップランドの検問所にも、中東、アフガニスタンなどから1000人以上が押し寄せた。
通常、ロシアの国境警備当局は移民をフィンランド国境に近づけることをしない。検問所に押し寄せた人の多くはロシアの滞在許可(ビザ)を所有しており、ロシアがEU諸国の混乱を引き起こすことを目的に、これらの人々を意図的にフィンランドに向かわせたことは明らかだった。
2014年のクリミア併合の際、ロシアは軍事行動に、サイバー攻撃、偽情報の拡散などの多様な手段を組み合わせた「ハイブリッド戦争」を遂行したが、フィンランドに対してもロシアは移民を政治的道具として利用し、「ハイブリッド戦争」を仕掛けたのだ。
ロシアとベラルーシは、2021年にも同じことをポーランドに対して行い、ベラルーシとポーランドの国境では移民とポーランド軍が衝突した。
ヘルシンキで話を聞いたフィンランド国際問題研究所のヨエル・リンナインマキ研究員によると、難民危機の際のラップランドでの越境事件以来、フィンランド政府は国内法の整備を進めるなど国境管理の強化を図ってきた。
フェンスの建設計画が議論され始めたのは、ポーランドへの移民流入の状況を見てからで、さらにウクライナ戦争をきっかけに建設が具体化した。
フィンランド外交筋は、「なぜ今フェンスを建設するかというと、ウクライナ戦争をきっかけに、われわれハイブリッドであれ、サイバー攻撃であれ、ロシアのあらゆる悪意ある行動に備えねばならないからだ」と話す。
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