企業のパーパスがパフォーマンスに与える影響を測る指標として、コンテキシスは「パーパス・インデックス(Purpose Index)」を用いている。この指標に関してロスリング氏は、先の顧客企業の1部門では、平均的な値である70程度のスコアが出るだろうと予測していた。
しかし実際のスコアは18だった。コンテキシスが調査を行ったなかで過去最低のスコアだ。
特に低いスコアを出した従業員は、長く働いている非常にシニカルな中堅マネージャーで、彼らは会社のパーパスに対する上層部のコミットメントをまったく信用していなかった。会社のパーパス・ステートメントはしっかりと理解していた。しかし、ただ信用していなかったのだ。
何が組織を劇的に変えたのか
上層部の失敗は、「情報伝達」ではなく、パーパスの「実現」にあった。中堅マネージャーと上層部は何度も慎重に対話を重ねた。そのなかでマネージャーらは、経営陣に対する不満や、親しい同僚らが職を失うのを見て経営陣に裏切られた気持ちになったことなどを明かした。
対話を重ねるうち、彼らは会社のパーパスが自分たちの生活にも関わりがあると気づき始めた。あるとき、1人のマネージャーが話し合いの途中で、「いい加減にしてください。あなたたちは何が言いたいんですか。私は家族を守るため、家族を養うために働いてるんですよ」、こう声を荒らげた。
すると別の人がこう言ったのだ。「お客様にとってもそれを可能にするのが、私たちの仕事じゃないんですか? 私たちの銀行が掲げる究極のパーパスは、社会を守ること、そしてみんなが社会を守れるように手助けをすることでしょう?」。
それからたったの7カ月で、その部門の売上は15%以上伸び、信頼関係が劇的に改善。ロスリング氏は「社内全体でワーストに近かったその部門の売上は、今ではほとんどトップとなりました」と語っている。
従業員ひとりひとりが、会社のパーパスを個人の生活に結びつけ、実践し始めたのだ。例えばある与信管理担当のマネージャーは、適当な信用調査報告書を提出してくる部下がいれば、以前はただ厳しいダメ出しをして、そのまま突き返したり、批判したり、作り直させたりと、部下のやる気をそいでいた。
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